本日、日本銀行から8月のマネーストック(速報値)の発表がありました。
マネーストックとは、民間銀行などの金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量のことで、個人や一般法人、あるいは地方公共団体などの通貨保有主体が保有している通貨量の残高のことです。
といっても解かりにくいと思いますので、もっと端的に言いますと、日銀を含む金融機関と中央政府以外の経済主体が保有する現預金の総額です。
国民経済をみるときには、現金だけがおカネ(日本円)ではないので注意が必要です。このマネーストックも広義の意味で立派な「おカネ(日本円)」なのです。
日銀によるとマネーストックの8月速報値は942兆円とのこと。
このマネーストックをマネタリーベースで割ったものが貨幣乗数となります。
同じような名前でややこしいのですが、しばしご容赦を。
マネタリーベースは、銀行紙幣(日本銀行券)と貨幣(政府が発行した硬貨)及び日銀当座預金残高の合計値です。マネーストックが広義の「おカネ(日本円)」であるのなら、マネタリーベースは狭義の「おカネ(日本円)」といえます。
マネタリーベースは日銀が量的緩和によって意図的に増やすことができますが、マネーストックは主として銀行の貸出しが増えないと拡大しません。
即ち貨幣乗数(マネーストック÷マネタリーベース)は、数値が低ければ低いほど世の中の資金需要がない、ということになります。貨幣乗数の低さは、いわゆるデフレ状態を意味します。
1929年以降の大恐慌時代のアメリカの貨幣乗数はたしか「2.5」ぐらいだったかと思います。因みに高度成長期の日本の貨幣乗数は「10.0」を超えていました。
そこで現在の我が国の貨幣乗数はというと・・・
7月、8月ともに貨幣乗数は「2.3」です。
グラフのとおり、黒田日銀による異次元緩和によって狭義のおカネ(日本円)であるマネタリーベースは既に400兆円を超えています。が、広義のおカネ(日本円)であるマネーストックは相応の拡大をしておらず、そのため貨幣乗数は下落するばかりです。
貨幣乗数をみる限り、現在の日本のデフレはかつてのアメリカの大恐慌レベルに至っている、といっても過言ではありません。
金融機関の貸出しが増えないのは、長引くデフレによって企業の資金需要がないからです。