金融庁が19日、新たな経済対策案としてNISA(少額投資非課税制度)の拡充を自民党の財務金融部会に提示したようです。
『積み立てNISA拡充、金融庁・財務省が検討 中小向け融資も
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF19H0K_Z10C16A7PP8000/
金融庁は経済対策として、年120万円までの投資で得た売却益や配当を最大5年間非課税とする少額投資非課税制度(NISA)の拡充を検討する。利用者の裾野を広げる少額積み立ての促進策が柱になる見通し。(後略)』
要するに、「非課税枠を増やしてやるから、もっと株を買えっ!」と金融庁は言いたいのでしょうか。
株価対策と経済対策がごっちゃになっています。べつに株価を上げることに異を唱えるつもりは全くありません。
とはいえ、どんなに株が買われてもインフレ率には全く影響しません。誰かによって生産されたモノやサービスが購入されることによって、はじめてインフレ率は上がります。株は誰かによって生産されたモノでもサービスでもありませんので。
そもそも経済対策の目的は、デフレ脱却のはずです。そしてデフレとは需要不足のことです。更にいうと需要不足とはモノやサービスの購入不足を意味しています。それを証明するものがインフレ率なのですが、そのインフレ率は一向に上がっていません。上がるどころか直近ではマイナスになっています。コアコアCPI(食料及びエネルギーを除く総合)はかろうじてプラスですが。(下図参照)
物事を目的から考察することができない偏差値秀才の欠点がよく顕れています。
例えば川崎市議会において私は教育問題についても取り組んでおりますが、じつは経済問題も教育問題に通ずるところがあります。
我が国では教育改革が叫ばれて30年以上が経っています。が、未だその成果は上がっていません。
なぜかというと、文部科学省をはじめ各自治体の教育委員会などの教育行政当局が、教育の定義、改革の目的を明確にしていないからです。定義も目的も不明確なままに結果がでようはずがありません。
経済問題も同様で、景気の定義、あるいは経済対策の目的が不明確なままに対策を講じている結果、先述のように「NISAの拡充で景気対策を」などという発想に陥ります。
景気の定義はGDP(国民経済)です。「景気が良くなる」ということは「GDPが増える(一人当たりの所得が向上する)」ということです。よって対策の目的は、
需要不足の解消=デフレ脱却=GDPの成長(一人当たりの所得の向上)
です。
デフレ脱却に成功しGDPが成長すれば、自然に株価も上昇します。しかし株価を強引に押し上げてもGDPが必ず成長するとは限らないのです。例えば、日経平均が30,000円代なのに実体経済はデフレ、という状況も普通にあり得る話しなのです。
むろん、株価対策を否定するつもりはありません。ただ、株価対策と景気対策は似て非なるものであることをご指摘申し上げているだけです。