菅官房長官はブルームバーグのインタビューで、経済対策の財源としての赤字国債は発行しないとしつつ、日銀にはまだ追加緩和をする術があるので金融政策は日銀に委ねたい、と答えています。
『菅官房長官:経済対策、赤字国債は発行しない-インタビュー
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-17/OAGCAB6S972801
菅義偉内閣官房長官は、今月末をめどに取りまとめる経済対策の財源として赤字国債を発行しない方針を明らかにした。日本銀行にはまだ追加緩和をする手段があると語ったが、28、29両日に開かれる金融政策決定会合での対応については日銀の判断にゆだねたい、と述べた。16日、ブルームバーグのインタビューで話した。菅氏は、「アベノミクスをさらに加速させる経済対策をやるべく準備をしている」と発言。財源については「ありとあらゆるものを駆使」して確保する考えを示したが、「赤字国債を発行する予定はないということは明言しておきたい」と語った。(後略)』
財源として赤字国債を発行しなくても建設国債を発行すれば済む話ですので一向に構わないのですが、建設国債では賄うことが不可能な医療や介護など福祉分野への手当はどうするのでしょうか。赤字国債の発行なしにできるのでしょうか。福祉分野はすでにインフレギャップが甚だしく、供給能力増強のための投資が急がれている分野であると思われるのですが、さて?
与党の一角たる公明党は、相も変わらず「プレミアム付き商品券や旅行券の発行」を望んでいるようですが、この政策自体には直接的なデフレ脱却効果はほとんどありません。なぜならデフレそのものを脱却できないままにプレミアム付き商品券をどんなにばら撒いたとしても、結局はプレミアム分が貯蓄に回ってしまう可能性が大きいからです。・・・が、一定規模および一定期間の財政出動(需要創造)が確約されるのであれば若干の付随的効果を見込めるのかもしれません。
さて、菅官房長官の言うように、日銀にはまだ追加緩和の余地はあるのでしょうか。
今やマイナス金利政策はむしろ銀行の収益を圧迫させています。一部の金融機関は民間企業などに対して口座手数料を求めだしている有様です。いずれ一般個人の口座にまで手数料を掛けるのではないか、という不安が拡散して個人消費を抑制させデフレ圧力になっている有様です。
残るは追加緩和措置としては更なる量的緩和ですが、政府が国債発行を抑制し続けてきたために、今や民間金融機関の国債保有率は低下、即ち市場の国債は枯渇しています。
民間の金融機関が保有している国債(国庫短期証券を含む)は、金額的にはあと239兆円しかありません。現在、日銀は年間80兆円ペースで国債を購入(量的緩和)していますが、このペースでいくと3年以内にゼロになる、という切迫した状況です。実際にはあと2年ももたないでしょう。
日銀がすべての国債を買い取ると、政府の負債がなくなりますのでハッピーなことでもあるのですが、困った問題が発生します。民間銀行の運用資産としての国債(安全な運用先)が無くなってしまうことになるからです。
また、このままいくと近い将来、黙っていても日銀の追加緩和策が尽きることが確定してしまいますので、猛烈な勢いで円高が進むことになります。となると、株価は大暴落することになるでしょう。株価重視の安倍政権はそれに耐えることができるのでしょうか。
つまり日銀はこれ以上、量的緩和のスピードを上げることはできないということであり、もう追加緩和の術はない、ということです。
黒田日銀総裁も内心では、
「これ以上、俺にどうしろって言うんだよっ」
と思っているにちがいない・・・