『時代は再び第一次世界大戦前~日本よ、備えはあるか』
第11回
構造改革とは主として「規制緩和」「公的サービスの民営化」「緊縮財政」という政策パッケージのことです。いわゆる「小さな政府」論ですが、その起源を遡るとレーガノミクス(レーガン米国大統領の経済政策)に行き着きます。
あの時代(1970年代)、アメリカは高いインフレ率(約10%)と失業率(約10%)の併存に悩まされていました。いわゆるスタグフレーションです。スタグフレーションは、インフレーションがそのベースになっていますので、需要過多、供給不足の状況にあります。
これを解決するためには、政府の支出(需要)を削減し、規制緩和や公的サービスの民営化によって企業による新規参入を促し供給能力を拡大する必要があります。
そうです。「規制緩和」も「公的サービスの民営化」も「緊縮財政」も、これらすべては、ことごとく「インフレ対応政策」なのです。これらインフレ対応政策を、こともあろうにデフレ経済下で断行しているのが我が日本国なのです。
つまり経済政策は善悪ではありません。その時の経済状態に相応しいか相応しくないかの選択の問題です。
我が国のデフレが解消され、過剰なインフレ状況に(例えばインフレ率10%以上)に陥ったときに採用すべき政策が、「規制緩和」であり「公的サービスの民営化」であり「緊縮財政」であるのです。ただし、国防や治安維持、あるいは重要インフラの整備管理など、国家国民の安全保障に関わる分野についてはインフレ、デフレであろうと「公的サービスの民営化」などありえません。
我が国では1990年代のはじめ頃から、「規制を破壊して民間に自由に競争させれば、効率よく安全が確保される」、なぜなら、「安全は企業の存続にとって極めて致命的なものであるから、企業は安全を疎かにすることはない」という規制緩和推進者が跋扈しはじめました。むろん、政府内にも国会内にも。
例えば、まさに1990年代、橋本内閣時代には、建築確認・検査の民間開放と戸建住宅・プレハブ住宅等についての中間検査制度の特例を設ける「建築基準法の一部を改正する法律案」が国会に提出されました。法案はその後成立し施行されました。その結果、いわゆる姉歯事件が発生しました。
あるいは、こうした規制緩和の流れの中で、タクシーの台数が増やされましたが、タクシーの実車状態での事故率は上昇しています。最近では旭化成や東洋ゴム、あるいはフォルクスワーゲンの問題もしかりです。
これらは、本来インフレ状況下で行うべき政策(規制緩和)をデフレ状況下で行ってしまった結果です。デフレという供給過剰状態の中で、規制緩和による新規参入者が増えれば余計に供給過多になります。そのうえで短期利益を求めようとすればモラルハザードを来す企業が現れるのも不思議なことではありません。それによる被害を被ったのは、まぎれもない日本国民たる消費者です。
このような意味からも、デフレ状況下にある先進諸国の国民はグローバリズムの被害者なのです。