問題はセキュリティ
前回のブログでも述べたが、2016年から政府と地方自治体は12ケタの個人番号で社会保障や税に関する個人情報を管理する。さらに2017年の1月からは、個人番号を使って行政機関が情報をやりとりするシステムが稼働する。これにより税務署や市町村がそれを把握していた個人の所得や税の情報を交換できるようになる。
こうした取り組みにより、行政の効率化が図られ、国民は確定申告や社会保険料の納付状況などを簡単に自宅のパソコンで確認できるようになる。行政窓口での余計な手間が省かれ、不正な二重申告もなくなり、税金や年金をいつでも確認できるなど、サービスが向上されるのはいい。ただ、このブログでも再三述べてきたように問題はセキュリティの問題だ。
デジタルデータ化が意味するもの
要するに、すべての個人情報が一つの番号で管理される。
例えば、病院の診療データもデジタル化される。社会保障番号に癌など疾病履歴や投与薬履歴がすべて結合される。税務データも個人の勤労と資産と所得のデータである。更に厚労省は職歴のデジタル記録をも住基ネットにあるデータに付け加えようとしているようだ。
これらのように、今までは不可能であったことがデータのデジタル化によって可能となる。
デジタルデータ化はアメリカの情報経済工作
アメリカの年次改革要望書2008年10月版には「情報技術」という項目が既にあった。そこには個人情報保護法の施行に関わるいかなる変更も、ビジネス環境の改善につながることを確保すること、と記載されている。
つまり、個人情報を保護しようと言いつつ、個人情報が保護されることによってアメリカのビジネスが阻害されることがあってはならない、と要求している。しかも、国境を越える情報の流れを制限するものであってはならないとも書いてある。
元CIA職員が暴露したように、インターネットの普及により現在は世界の情報の8割以上がアメリカを経由することが確認された。人々がスマホやタブレット端末を利用することにより、世界中の情報がアメリカにある巨大なデータセンターに集まるようになっている。こうしたクラウドコンピューティングの普及により、アメリカ政府は居ながらにして世界中の情報を閲覧できるようになった。
日本の個人情報保護法は外国では適用されない
アメリカだけではない。スマホアプリであるラインのサーバーは韓国にあり、ソフトバンクのデータセンターも釜山にある。こともあろうにNTTデータまでが釜山にデータセンターを拡充しようとしている。データセンターが韓国にあるということは日本の個人情報保護法は適用されないということだ。日本の政治家は、なぜそれがわからないのか。
政治家はもちろん、日本の官僚や川崎市の職員の携帯メールやパソコンメール、あるいはグーグルやアマゾンを利用することでのデータの流出は今や膨大なものとなっているだろう。役所や住民の膨大な情報が吸い上げられることによる国家安全保障と経済的な損失は計り知れない。
鳩山由紀夫を野放しにする日本の有事体制
グーグルは、衛星で撮影したかなり精度の高い画像をインターネットで公開している。そもそも日本のように詳細な市街地図を自由に買える国も珍しい。加えて詳細な海底地図まで出回っている。グーグルの「ストリートビュー」をみれば個人宅まで写っている。車にカメラを取り付けて日本中を走り回って撮影しているのだろうが、普通の国ならスパイ行為と見なされ逮捕されるはずだ。
「ストリートビュー」が国会で問題にされた、ということなど聞いたことがない。
鳩山由紀夫の尖閣諸島に関する発言など、これがもしアメリカなら国家反逆罪の罪に問われるだろう。だから元CIA職員のエドワード・スノーデンは逃げ回っている。
今の日本には、グーグルを処罰する国家機密保護法も、鳩山由紀夫を逮捕する国家反逆罪法もない。つまり有事法制がない。このような状況で情報インフラをアメリカに依存したままでは国益は損なわれるばかりだ。
必要な人材・組織・法体系の整備を
確かにデジタルデータ化の時代は避けられない。であるからそ、相応の対策をとっていかなければならない。個人情報保護法や著作権法の見直しはもちろん、国家機密保護法や国家反逆罪法などの有事法制の整備、さらには自前のクラウド基盤の整備など、国家としてやるべき仕事は山ほどある。地方自治体においても、サイバーテロやサイバーインテリジェンスに対応し、社会インフラや住民情報や企業情報を守る知的財産課の創設と人材の育成も必要だ。
国会議員も地方議員も地元の盆踊りを回るだけが仕事ではないはずだ。