去る8月17日、国土交通省から建設総合統計が発表されました。
建設投資(需要)は公共部門と民間部門、そして土木部門と建築部門にカテゴリーされますが、公共建設の8割以上は土木が占め、民間建設の同じく8割以上は建築が占めています。
発表された建設総合統計から、公共部門及び民間部門の建設(土木・建築)投資の2000年から2015年までの推移をみますと下のグラフのとおりになります。
長期スパンでみると、建築投資が8割以上を占める民間部門においてその建築投資(出来高ベース)が減り、土木投資が8割以上を占める公共部門においてその土木投資(出来高ベース)が減りました。
自然災害大国たる我が国の防災安全保障を担っている建設業(土木・建築)の供給能力が毀損されてきたのはこのためです。
グラフのとおり、2014年時点の建設業就業者数は今から約30年前の1985年の水準さえをも下回っています。
質の高いインフラを構築していくために必要な技術力は、主として人材に継承されていきます。そのインフラ人材たる建設業就業者数が減少していくということは貴重な技術資源までもが衰退していくことを意味します。
昨日も台風9号の関東上陸によって各地域に被害がでました。
有事に備えた安定的なインフラ投資を怠ると、災害から国民を守るためのインフラ資産(ヒト・モノ・技術)は当然のことながら脆弱化していくことになります。
逆に、建設業の供給能力を維持することができれば、自ずと我が国の防災安全保障能力は強化されます。
一方、災害時の復旧・復興過程においても土木・建築の供給能力がものをいうわけですが、こうした供給能力こそまさに国力の源泉です。
その意味で、公共投資は立派な安全保障なのです。被害がでてからでは遅いのです。
よく、「行政が公共事業を増やしてしまうと供給能力が奪われ、民間の建設需要が充たせなくなってしまう」という理屈で公共事業費の拡大を阻止しようとする人たちがいます。
前述のとおり、公共は8割以上が土木で、民間は8割以上が建築なのだから公共部門と民間部門で供給力を奪い合うようなことにはならないはずです。
いかにもご尤もそうな理屈を捏ね上げて、これ以上、日本国民を危険にさらすのはやめてほしい。