昨日(8月23日)、厚生労働省から6月の実質賃金確報値が発表されました。
時系列でグラフにすると次のとおりになります。
左軸の実質賃金指数をみますと、依然、2010年当時の水準には及ばないものの、対前年比でみますと、ここ数か月の間やや横ばい状態になっています。
これは実質賃金が僅かながらも上昇してきたというより、物価下落によるものと推察されます。
正しいデフレ解消のサイクルは、
物価上昇 → 実質賃金上昇 → 実質消費上昇
です。
残念ながらここ数か月の間、物価は下落の一途をたどっています。
また、改めて我が国における家計の可処分所得と貯蓄率の推移をみてみますと下のグラフのとおりになります。
1998年のデフレ突入以降、家計の可処分所得と貯蓄率のグラフは急降下しています。
注目すべきは、1991年のバブル崩壊からデフレに突入する1998年までの間、家計の可処分所得は上昇しつづけていた点です。
なぜなら、この時期の政府はバブル崩壊に伴う消費の縮小を財政出動(公共投資)という需要創造によって着実に補っていたからです。
1997年に橋本内閣が消費税増税(3%→5%)と緊縮財政をはじめたことにより、日本はデフレに突入していきます。
以来、もう20年です。他界された橋本龍太郎元総理は晩年、自らの失政について甚く反省をされていたそうです。
今後、生産年齢人口が減少する我が国では、今まさに投資(公共投資・設備投資・人材投資・技術開発投資)による生産性向上が求められています。
加えて、自然災害大国たる我が国では防災安全保障を確立するための公共投資(防災投資と言ってもいい)も必要です。
更に申し上げれば、これら一連の投資はデフレギャップ(需要不足)の解消にもつながります。
いわば、以下3つの問題を同時に解決できる一石三鳥の政策です。
1.デフレ解消
2.防災安全保障の確立
3.生産年齢人口比率低下を克服する生産性の向上
因みに、過日に発表された安倍内閣の経済対策は事業規模で28.1兆円とされていますが、確実にGDPを生み出す政府支出(真水)は16年度に6兆円強でしかないようです。
デフレ解消の脱出速度を確保するには規模が足りないものと思われます。
むろん、やらないよりはマシでしょうけど・・・