企業とは、その信用をもとに自己資本を大きく上回る規模の資金を借り入れ、より高い収益を確保する経済主体です。
借り入れを増やして設備投資を行う。そのことで株主資本利益率を拡大する。それを「レバレッジ(Leverage)を利かす」ともいいます。因みに、レバレッジ(Leverage)とはテコの意味。
逆に、借り入れを増やさず設備投資をしない状態のことをデレバレッジ(Deleverage)といいます。
むろん、企業がレバレッジを利かして株主資本利益率を拡大するのが健全な資本主義経済の姿です。要するに、企業はおカネを借りて投資しなければならない存在なのです。
当然、健全な資本主義経済においては、企業の資金過不足はマイナスになっていなければなりません。
ところが残念ながら、我が国では1998年のデフレ突入以降、企業の資金過不足はプラス状態という異常事態が続いています。
青い棒グラフの非金融法人企業というのが、いわゆる一般企業です。
資金過不足がプラスということは、企業が借金を返済しているか、預金をしているか、あるいは借金をせず投資をしていないかの何れかにあたります。だからこそデフレ状態が続いているわけです。
また、デフレ状態が続いていることもあって、企業がデレバレッジに走る、という悪循環に陥っています。
もうひとつ、企業がデレバレッジに走る理由があります。
それはグローバリズム(新古典派経済学に基づく経営教義)にあります。
グローバリズム、あるいはグローバル株主資本主義が蔓延することの弊害は、株主資本利益率を上昇させる手段として、経営者が借り入れを増やして設備投資を拡大するのではなく、費用削減により利益を拡大することです。
即ち、おカネを借りて投資する経営者よりも、人件費や減価償却費を削減して株主利益を拡大する経営者のほうが称賛されてしまうのです。
そこにも、我が国の実質賃金が上昇しない理由があります。
上のグラフのとおり、実質賃金は未だ2010年平均を下回っています。しかもデフレ突入以降は、なんと13%も下がっているのです。
昨日投開票された東京都知事選挙においても、いわゆる待機児童問題が取り上げられていました。
もしも実質賃金が継続的かつ恒常的に上昇していくようになれば、廉価な保育料にとらわれることなく保育園を選定できる世帯や、子育てに専念したいという女性も現れることから、待機児童問題は一気に解消されることになるでしょう。
その意味で、待機児童問題を解決するための最大の特効薬は実質賃金の上昇にあります。
このようにグローバリズムの蔓延は待機児童問題にまで影響を及ぼしているのです。