去る7月27日、『一億総活躍・地方創生全国大会in九州』において、安倍総理が力強い講演を行いました。
安倍総理の講演の中で、私が感銘したフレーズは次の部分です。
『何もせず、ただ手をこまねいていて「成長」するなんていう、甘い話はありません。本日は、企業経営者の皆さんもたくさんいらっしゃっておりますが、「投資」なくして「成長」なしです。これは、国も、民間も、同じことであります。
私は、農林水産業、インバウンド観光など、未来の成長につながる分野、すなわち「未来の成長のタネ」には、大胆に投資したいと考えています。』(安倍総理講演から抜粋)
投資対象に「インバウンド観光」が入っているところはいかにもド素人臭いところですが、まあ「投資なくして成長なし」という基本認識は正しいと思います。
そこで、ぜひ総理におかれては下のグラフをご覧頂きたいと思います。
上のグラフをみてのとおり、1998年のデフレ突入後の総固定資本形成は縮小傾向にありました。
因みに、総固定資本形成とは、民間企業の設備投資、民間の住宅投資、公共投資(用地買収費等を除く)の合計です。要するに日本国家全体の投資のことです。
一方、高度成長期のそれをみますと、下のグラフのとおりになります。
ご覧のとおり、高度成長期というのは、官民あげての「投資!投資!投資!」の時代だったことがわかります。この時期に国民の所得(実質賃金)が飛躍的に伸びたのはそのためです。
次いで、総固定資本形成の増減率をみますと下のグラフのとおりです。
とりわけ、グラフの赤丸部分をみてのとおり、バブルの崩壊によって投資は減りはじめたものの、極端に投資が減ったのは1998年のデフレ以降のことです。バブルが崩壊したのちも政府は公共投資を怠りませんでしたので、そのお陰で景気はさほどに悪化しませんでした。
ところが、止めを刺したのは橋本内閣による緊縮財政と消費税増税(3%→5%)でした。1997年のことです。
民間にひきつづき、政府までもが投資と消費を抑制したことによって我が国はデフレに突入。国民の所得(実質賃金)は下がりつづけることになります。昨日のブログでも述べましたが、デフレ突入から現在までの実質賃金は、なんと13%減です。
成長とは実質賃金が上昇することです。
安倍総理の仰せのとおり、投資なくして成長(実質賃金の上昇)なしです。また現在のように、我が国が他国を圧倒するほどの供給能力(国力)を蓄積できたのも高度成長期時代の投資の結果です。
ところが、近年の投資不足によって国力の源泉たる供給能力は棄損されつづけています。
本日、閣議決定される経済対策のポイントは、どれだけの総固定資本形成を具体化することができるのかにあります。
とりあえず、薄く期待します。