去る6月1日、ようやく安倍総理は財政出動の必要性を認めました。以降、その方向に動き出してはいるようです。
そうすると必ず、財務省を中心とした緊縮財政派や、デフレ環境で儲けたい構造改革派らによる抵抗運動がはじまることは想像に難くないですね。
とりわけ「プライマリーバランスの黒字化目標」を盾にして抵抗するのが、彼らの常套手段です。
例によって財務省の御用グローバリズム新聞が、すかさず以下のような記事を書いています。
『基礎的収支、黒字化遠く 20年度の赤字5兆円と試算
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H4B_V10C16A7MM8000/
内閣府の中長期的な財政に関する試算で、2020年度時点の国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字額が5兆円台になることが分かった。物価低迷で年金など国の歳出がやや抑えられ、従来見通しより赤字は減る。20年度までの黒字化達成に向け一段の歳出抑制などの対応を迫られる。今月末の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で最新の試算を示す。(後略)』
記事よれば、今月の末に「経済財政諮問会議」において最新の試算を示すとのことですが、一応、経済諮問会議のメンバーをご紹介しておきます。
議長 安倍 晋三 内閣総理大臣
議員 麻生 太郎 副総理 兼 財務大臣
同 菅 義偉 内閣官房長官
同 石原 伸晃 内閣府特命担当大臣(経済財政政策) 兼 経済再生担当大臣
同 高市 早苗 総務大臣
同 林 幹雄 経済産業大臣
同 黒田 東彦 日本銀行総裁
同 伊藤 元重 学習院大学国際社会科学部教授
同 榊原 定征 東レ株式会社 相談役最高顧問
同 高橋 進 日本総合研究所理事長
同 新浪 剛史 サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長
とりあえず政治家と日銀総裁を除いたうえで、その顔ぶれをみてみますと、なるほど、と思わせます。
例えば、かの有名な御用学者・伊藤元重氏は「日本の財政はいずれ破綻するぅ~」と、オオカミ少年のように長年にわたって言い続けていますが、ご承知の通り我が国では未だ破綻の気配さえありません。
榊原氏にしても新浪氏にしても、詰まるところはグローバリズムと構造改革の推進によって、国民が貧乏になろうが、あるいは国民生活の安全保障が破壊されようがお構いなしに、ただひたすらに儲けたいだけの人という印象です。
常々思っているのですが、こうした特定の一民間人(企業家)に過ぎない人たちが政府の諮問会議に入って、自分の会社の利益のために公的な影響力をふるっていいのでしょうか。彼らは事実上、国民から選ばれた国会議員よりも影響力を発揮しています。
ともかくも、こうした手合いの人たちは必ずプライマリーバランスの黒字化を盾にして財政出動に抵抗されるのです。
なぜかといえば、例えば伊藤元重氏が財政出動を認めてしまうと自分の学説を否定することにつながるからでしょうし、グローバル企業家たちにしてみると、財政出動でデフレを克服されてしまうと自分たちが儲からないからでしょう。(グローバル企業はデフレ環境のほうが利益を上げられます)
川崎市役所にも川崎市議会にもいますが、この世には「プライマリーバランスの黒字化こそが正義」という半ば宗教化した思想者が遍くおられます。
お題目は常に・・・
「プライマリーバランスを黒字化しないと、いずれ日本国債が暴落して金利が急騰し国家財政が破綻するぅ~」
です。
そこで、下の二つのグラフをご覧ください。
まずは、基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスの推移です。
次に、日本の長期金利(新発10年物国債の金利)の推移です。
プライマリーバランスは一向に黒字化していないのに、長期金利は低下する一方です。というか今やマイナス金利です。
この現実を彼らは平然と無視します。 インチキ宗教に洗脳された人たちの共通点は常に、都合の悪いことは無視、です。
こうした宗教思想のおかげで、これまでの日本経済は以下のような悪循環に陥ってしまいました。
財政出動しない(緊縮財政) → デフレ継続 → 税収不足 → 緊縮財政(財政出動しない) → デフレ継続 → 需要不足 → 投資しても儲からない企業はカネを借りない(低金利) → なら政府がおカネを借りて使おう(財政出動)!→ プライマリーバランスの黒字化に反するからダメっ! → デフレ継続 → 税収不足 → 緊縮財政
ね、馬鹿げてますでしょ。
プライマリーバランスの黒字化は「インフレ期における」正義です。