報道された一つのニュースが、人によってどのように解釈されるのかは計り知れません。
『三菱東京UFJ銀行 国債入札の特別資格返上へ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160614/k10010555651000.html?utm_int=news-business_contents_news-main_001
「三菱東京UFJ銀行」は、日銀のマイナス金利政策の影響で国債を保有することが負担になっているとして、国債の入札に有利な条件で参加できる特別な資格を国内の大手銀行で初めて国に返上することになりました。(後略)』
例えば、上記のニュースを聞いて、
「三宅さん、国債金利がマイナスってことはやっぱり日本の国債はもうダメなの?」
・・・とか、
「三宅さん、三菱が手を引くほどに日本の国債にはもう価値がないの?」
・・・とか。
おそらく「クニのシャッキンでニホンはハタンするぅ~」の刷り込みからくる曲解かと思われます。
三菱東京UFJ銀行が返上しようとしているのは国債じゃなくて、プライマリー・ディーラー(国債市場特別参加者)という資格です。
プライマリー・ディーラーとは、その資格を得ることで発行当局と意見交換する場に参加できる等のメリットがある一方で、発行予定額の4%以上の入札に参加しなければならない義務も負わされています。
あまりにも日本国債の信任が高すぎて国債の価値が上がり結果として国債金利がマイナスになっている、即ち国債の売値が買値よりも安い逆ザヤ商品になっていることから、三菱東京UFJとしては、もうそんな資格なんていらないから、自由に国債を売り買いさせてほしい、といったところです。
国債の価値が上がるとマイナス金利になるという意味は次のとおりです。
例えば、元利金を含めて10億円しか返ってこない国債という商品があったとします。それを10億円以下で買わないと購入した人に利益はでません。それを11億円でも欲しいという購入者が現れたとします。その人は1億円の赤字(マイナス)になります。国債金利がマイナスというのはそういうことです。
つまり損をしてでも手に入れておきたい価値ある金融商品、それが日本国債なのです。
自国建て通貨で発行された国債がデフォルト(債務不履行)する可能性はゼロですし、政府の子会社たる中央銀行(日銀)が量的緩和の名の下に大量(年間80兆円のペース)の国債を買い入れ実質的な政府負債も減っているし、仮に逆ザヤで購入したとしても最終的には日銀が相応の金額で買い取ってくれるので各金融機関はマイナス金利でも日本国債を購入するわけです。
いまや日本国債は「有事の金」よりも価値の高い金融商品になっています。
デフレ期にもかかわらず、政府が川崎市の財政局みたいに「財政収支の均衡(緊縮財政)がぁ~」とか言って、国債発行を抑制してきたものですから、金融市場の国債が枯渇してしまったのです。即ち限られた(枯渇した)国債をみんなで奪い合っているからこそのマイナス金利なのです。
これを解決する方法はただ一つ。
政府が国債を発行して総需要をつくるのみです。いわゆる財政出動です。
そうすれば、デフレギャップは解消され、マイナス金利という異常事態(資本主義の機能停止状態)は回避されます。
では、その総需要って何?
1.民間最終消費支出
2.政府最終消費支出
3.民間設備投資
4.住宅投資
5.公共投資(公的固定資本形成)
6.在庫変動
7.純輸出(純輸入は総需要から控除されます)
上記の七つです。
さあ、政府が一義的につくることのできる需要はどれでしょう?
古典派であれ、新古典派であれ、いわゆる主流派経済学に洗脳された人たちには解らないでしょう。
なぜなら、デフレ期には「供給すれば必ず需要が生まれる」という主流派経済学が前提とする「セイの法則」は成り立ちませんし、それに、どんなに民間(企業や家計)資金を潤沢にしたところで、それらがモノやサービスの購入に使われなければデフレを脱却する(総需要の不足を埋める)ことはできませんので。
安倍総理は6月1日の記者会見で、財政出動の必要性に言及されました。
しかし、デフレ期にもかかわらず財政規律を重んじる財務省および主流派経済学に洗脳された人たちから徹底的に足を引っ張られることが予想されます。
まずは総理に期待します。