アベノミクス3本の矢が実質的には1本の矢(金融緩和)だけに終わり、そのうえ増税を含めた“緊縮財政”と、株主資本主義化を目的とした“構造改革”を容赦なく進めたことが現今の厳しい経済情勢を招いています。
ここのところの安倍内閣の一連の動きをみていると、ようやくその大いなる失政に気づいたかのような展開です。ていうか気づくのが遅いけど・・・
下の記事を読むと解るように、これまで頑なに拒否ってきた“財政出動”の必要性をも暗に認めていますね。
『16年度予算執行、上半期で8割 景気回復へテコ入れ
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS01H7S_R00C16A4EE8000/
財務省は1日、2016年度予算の公共事業などを4月から9月末までの半年間で8割執行する数値目標を固めた。一般会計や特別会計をあわせた12兆円程度の事業が対象だ。例年なら上半期で7割程度の執行となるが、今回目標とする8割が達成されれば過去最高水準のペースとなる。回復の鈍い景気をてこ入れする。安倍晋三首相は予算が成立した3月29日に麻生太郎財務相に予算を早期執行するよう指示していた。(後略)』
おそらく秋には補正予算を組むことになるのではないでしょうか。
財政出動となると、その規模と対象と時期が問題となりますが・・・
アベノミクス以降、日本の実質賃金は5ポイント以上下落しています。これはおそらく歴代内閣で最低の数字です。因みに実質賃金の低下とは、国民の貧困化を意味しています。(※アベノミクス前、即ち野田政権時でさえ低かったにもかかわらず)
アベノミクス前、つまり2012年の野田政権のときの実質賃金水準を回復するには、雇用者数の増加分から換算すると2016年は532.4兆円の実質GDPを確保しなければなりません。
とすると、2012年の実質GDPは確定値で519.2兆円でしたので、今年は13.2兆円を上乗せしなければならないことになります。
以上のように、実質賃金をアベノミクス前の水準に戻すためには、秋の補正を含めて13.2兆円の需要創造が必要となりますが、果たして・・・
三宅試算はともかく、大型補正に対しては、緊縮財政派や構造改革派らが間違いなく反対することでしょう。特に財務省の抵抗は必至です。
詰まるところ、せいぜい2~3兆円規模で、しかも所得移転系のいわゆる選挙対策バラマキで終わってしまうのかもしれません。