地方自治体には必ず地域の産業・経済を所管する部署がございます。川崎市でいうと「経済労働局」。
その自治体によって局の名称は様々です。例えば、お隣の横浜市さんは単に「経済局」。東京都さんは「産業労働局」などなど。
小規模な自治体は別として、東京都はもちろん川崎市や横浜市のような一定程度の経済規模(GDP規模)を有する都市行政では、その地域の経済情勢をマクロな視点から俯瞰する発想が必要であると私は考えています。
ところが多くの自治体の、いわゆる「経済局」では、その地域の商工会議所や商店会組織への対応や各種イベントへの対処がその役割の大部分を占めています。それはそれで別に問題はないのですが、とはいえ、その地域における経済情勢を分析し、行政にしかできない経済対策を立案し即応していく役割をも担って頂かなければなりません。
例えば現在、市内でビジネスされている事業者を含め市民の家計を苦しめているもの。それは間違いなく「デフレ」です。そのデフレをどのような現象としてとらえ、いかなる対策を講じるのかについて考えることも「経済局」の役割であるべきです。
しかし先日の議会質問でのやり取りでも明らかなように・・・
現状の市内経済の状況分析を所管局長(経済労働局長)に質問すると、政府解釈をそのまま読み上げてごまかします。詰まるところ、そんな分析などしたことがないので解らないのでしょう。
政府解釈をそのまま読み上げてしまうものですから、へいきで「デフレを脱却しつつあり・・・」とか答弁してしまうあり様です。
以前、私は所管課の職員に以下のように質問したことがあります。
「現在の川崎市の消費者物価指数は何%かご存知ですか?」
すると、
「それは統計情報課の所管です」
と、まるで「そんなもの私の知るべき情報ではない!」という語調でした。
所管課の職員が消費者物価指数を把握していないのに、議会答弁した経済労働局長は、いったいどうやって「デフレを脱却しつつある」ことを確認したのでしょうか?
デフレとはモノやサービスの購入量が減り、物価が下落し、所得が縮小し、結果として更にモノやサービスの購入量が減るというスパイラルに陥ることです。
よって、モノやサービスが売れているのか売れていないのかを把握する指数として消費者物価指数があるわけです。地域の産業経済を所管する部署がそれを把握するのは当然のことなのです。
川崎市の消費者物価指数の増減率をみてみると・・・以下のとおり。
2014年の4月だけ急激に上昇して2%増になっていますが、ご承知のとおり、これは消費増税の2%増の影響です。モノやサービスが購入された結果として上昇したのではありません。
日銀の物価目標はコアCPI(生鮮食品を除く総合物価指数)で2%です。上記のグラフは生鮮食品を含めた総合物価指数ですが、それでも2%には全く及んでいません。それだけ需要(モノやサービスの購入)が弱いということです。
それでも川崎市の経済労働局長によれば、川崎市は「デフレを脱却しつつある」とのことです。
この局長、聞くところによると、そこいらじゅうで講演してまわるほどの立派な政策通だそうです。
なるほど、消費者物価指数を上げないままデフレを脱却することができるのですから、そうとうな政策手腕をもっています。まるで魔法使いのようです。いずれ安倍内閣から入閣の声がかかるかもしれません。あるいはこの川崎に、全国の自治体から視察団が殺到するかもしれません。
現在公判中の野々村竜太郎元議員も、架空出張などしないで、ちゃんと川崎市の経済労働局長のところに視察にきていればよかったのに。