『時代は再び第一次世界大戦前~日本よ、備えはあるか』
第28回
自衛隊の活動要件というものは、発生する各種事態ごとにそれぞれ法律で制約されています。
最も典型的な例として、外部からの武力攻撃が発生した事態、あるいは明白な危険が切迫していると認められるに至った事態、つまり我が国を防衛するため必要があると認められる場合、内閣総理大臣は国会の承認のもとに自衛隊に対して「防衛出動」を命じることができます。その裏付けとなる法的根拠は自衛隊法第76条です。
この自衛隊法第76条において、自衛隊の活動要件が制約されています。例えば、武力の行使については自衛権発動の三要件を満たす場合に限りますよとか、公共の秩序維持のための権限については云々何々ですよとかです。
あるいは、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては治安を維持することができないと認められる場合には、内閣総理大臣は自衛隊法第78条に基づいて自衛隊に対し「治安行動」を命令します。
このように各種事態に対して、法律に則って自衛隊は任務完遂を目的に活動展開するわけです。そして日夜そのための訓練に勤しんでおられます。
法律で規定された自衛隊の活動区分には様々ありますが、大きく分けると主として・・・
①防衛出動
②治安行動(海上自衛隊の場合は海上警備行動)
③災害派遣
の3つです。
ところが1970年以降、自衛隊は②治安行動の訓練を行っていません。行われなくなった理由の詳細についてはここでは割愛しますが、ざっくり簡単にいうと当時の国会議員たちが訓練をやらせなくしたのです。いわゆる戦後レジームです。
精強な軍隊は厳しい訓練によって生まれます。どんなに予算と装備を充実しても、実践的な訓練を重ねなければそれらの装備を適切かつ効果的に運用できる人材が育成されません。
特に、テロやゲリラこそが国際的驚異となっている時代に、自衛隊に治安行動の訓練をさせないのは異常であり深刻な問題です。
平成7(1995)年のオウム真理教の地下鉄サリン事件は、世界初の大都市における生物化学テロでした。このとき自衛隊は除染活動においては迅速な対応をされましたが、テロそのものの排除行動はできませんでした。
昨日、赤坂の迎賓館でテロ訓練が行われましたが、訓練対象者は警視庁のみであってそこに自衛隊の姿はありません。
『迎賓館で初のテロ訓練=一般公開増加に備え—警視庁
http://jp.wsj.com/articles/JJ10056735714326503517016494145730680621780
外国の元首や首相をもてなす東京都港区の迎賓館で15日、警視庁が初のテロ対策訓練を行った。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を5月に控えている上、迎賓館の一般公開が今年大幅に増えるため、不測の事態への備えを強化する。
訓練は、爆弾の入ったバッグや銃を持ったテロリスト2人が敷地内に侵入し、人質を取ったと想定。機動隊に昨年新設された「緊急時初動対応部隊(ERT)」や警備犬が2人を制圧した後、特殊車両が「爆発物」を処理する。赤坂署や第7機動隊、迎賓館の職員ら約100人が参加した。』
もう一度言います。
もしテロが発生し、警察の手に負えない事態が発生した際、総理が自衛隊に「治安行動をやれ」と命令しても、現在の自衛隊には治安行動はできないんですよ、安倍総理。
もてる国力を最大限に発揮させるのがあなたの仕事です。