三宅隆介
私は、経済局長に、6款2項1目について並びに観光政策について、一問一答形式でお尋ねいたします。
観光というものを一つの産業政策として位置づければ、これは市内の経済発展のための大きな原動力であると考えます。観光ほどすそ野の広い産業はありませんで、例えば運輸や宿泊、飲食業などのほか多くの産業に経済効果が波及し、雇用や税収、あるいは外貨収入などの増加をももたらします。
そこで、出かけるだけの観光から、受け入れるために何をすべきかの視点に立って、観光政策を展開していかなければならないということになろうかと思います。そして、本市における昨年1年間の観光収入はおよそどれくらいに達したのか、概算で結構でございますので、お示しいただきたいと思います。
経済局長(植松了)
観光収入についての御質問でございますが、本市では、毎年主要な観光施設13カ所の入り込み客数調査を行い、市内の観光客数の把握を行っております。平成14年度の調査結果では、総数1,177万人となっております。観光収入については、現在のところ把握しておりませんが、今年度、観光施設の利用客を初めホテルの宿泊客に直接面談を行い、市内で消費する交通費、宿泊費、お土産購入費などの旅行経費を調査する観光客動態調査を実施し、おおよその観光収入を試算する予定でございます。以上でございます。
三宅隆介
今のところ、観光収入というものの数字を出していないということでございますけれども、観光を産業政策として本気で位置づけるのであれば、やはりそうした数値なり、概算なりというものをはじき出す体制というものを整えておくべきだと思います。そして、施設などの利用客数だけでなく、訪れた方が平均的に幾らぐらいお金を使い、そしてあるいはお金を使わせるにはどのような対策が必要なのかなど、ハード、ソフト、この両面から検証する戦略的な発想が大変重要だと思います。
次に、観光収入を発展拡大させていくためには、観光資源の掘り起こしが当然必要となるわけでありますが、観光資源の発掘あるいは開発に向けて、これまでどのような取り組みが行われてきたのか、お尋ねいたします。そして、本市は幸いにして、古代から中世にかけての遺跡や、近世には東海道筋の宿場町として栄えた歴史、あるいは近代化を支えた臨海工業地帯の歴史的価値のある産業機械や器具など、決して観光資源に乏しい環境にあるとは言いがたい状況にあろうかと思うわけでありますけれども、これら本市の誇るべき観光資源が十分に生かされてきたとお考えなのか、また市民による地域情報の発信、受信を活性化するための施策はとられてきたのか、以上3点をあわせてお尋ねさせていただきます。
経済局長(植松了)
観光振興におけるこれまでの取り組みについての御質問でございますが、初めに観光資源の発掘、開発についてでございますが、本市では、従来から観光写真コンクールなどにより観光資源の発掘を行い、観光マップやガイドブックなどを作成してまいりました。平成14年度には新たに市内の観光スポット約600件を盛り込み、インターネット上で検索できる川崎市観光データベースを作成いたしました。また、本年度観光マップを新たに作成する中で、産業遺産や話題性のある商業施設などを、新たな観光資源として紹介してまいりたいと考えております。
次に、観光資源の活用についてでございますが、川崎区内におきましては、市民団体が、東海道川崎宿を活かした地域活性化方策委員会を立ち上げ、その歴史と文化を生かした地域の活性化を進めているところでございます。また、臨海部では企業と市民が協働し、かわさき産業ミュージアム構想を策定して、近代化遺産や産業文化財を観光の資源として活用していく取り組みが行われております。このほか大山街道では、高津区役所が中心となり、地元商業者や町内会の方々と、大山街道活性化推進協議会を組織化し、歴史を生かしたまちづくりの検討を行っているところでございます。いずれにいたしましても、本市といたしましては、地域の市民や企業と連携して、市内の観光資源のより一層の有効活用を図ってまいりたいと考えております。
次に、市民による地域情報の発信、受信の活性化についてでございますが、観光情報は、より新しい鮮度の高い、また、地域に根差した詳しい内容をいかに取り扱うかが重要と考えております。特に地域の観光情報は、市民の方々との連携を密にした取り組みが求められているところでございます。本市におきましては、平成14年度に、市民の中から募集した観光情報調査員の方々が収集した情報から、観光データベースを作成する事業を行ってまいりました。今後はこうした方々を初め、地域のボランティアの御協力による観光情報収集ができるような仕組みづくりに努力してまいりたいと考えております。以上でございます。
三宅隆介
観光は決して本市だけで完結させる必要はないわけでございまして、隣接の自治体にも観光資源が転がっております。広域的な視点に立つことも必要であると考えるわけであります。例えば、来年のNHK大河ドラマでは新選組がテーマになっており、その影響で、多くの観光客がお隣の東京都に訪れることが予想されますが、比較的調布市、日野市に近く、本市でも北部にある麻生区や多摩区の史跡とパックにして、日帰り観光ができるような商品開発があってもいいと思うのですが、これはあくまでも一例ですけれども、こうした戦略的な取り組みを民間の観光会社と進めるような仕組みをつくる予定があるのかどうか、お伺いをさせていただきます。
経済局長(植松了)
民間会社と観光を推進する仕組みづくりについての御質問でございますが、仕組みづくりに当たりましては、1つには、広域的な観光地の関係者の意向、2つには、観光資源そのものが持つ魅力、3つには、観光資源同士を結ぶネットワーク化と組み合わせ、4つには、訪問者を迎える地域の熱意、5つには、民間会社がビジネスとして参入するための採算性など、検討を要する課題がございます。現在本市では、観光協会や商業者、関係団体の代表で構成される、市制80周年・川崎区観光事業推進委員会を設置し、川崎区内を中心として、広域からの観光客を呼び寄せる事業を立ち上げたところでございます。今後はこの委員会の活動を踏まえて、効果的な仕組みづくりを研究してまいりたいと考えております。以上でございます。
三宅隆介
本市が観光を産業政策として位置づけ、国内外から旅行者を誘致する視点を持てば、当然、まちづくりも観光の視点から取り組まなければならないと思います。関係当局それぞれの組織的な連携は十分にとられてきたのか、お尋ねさせていただきます。
経済局長(植松了)
観光における組織的連携についての御質問でございますが、観光の推進は、行政だけでなく、産業界及び市民が一体となって推進するものと認識しております。行政といたしましては、関係する所管部局が、まちの案内表示を初め景観デザイン、緑化事業、イメージアップなど、観光に関連する事業に取り組むほか、多様な広報機能を担ってまいりました。今後も、産業界、市民及び行政が一体となって、市内観光協会とさらに連携を深めて、川崎の観光を推進してまいりたいと考えております。以上でございます。
三宅隆介
最後に確認をさせていただきたいんですが、本市の観光の充実を考えれば、旅行者集客の目標数値などを設定して、総合的な観光振興プランなどを策定することが必要だと考えますけれども、こうしたプランの策定の予定があるのかどうか、お尋ねさせていただきます。
経済局長(植松了)
観光振興プランの策定についての御質問でございますが、観光の振興につきましては、行政はもちろん、市民、地域、観光業界、商業界など、多くの関係者がかかわり、地域全体で観光によるまちづくりを進めていく必要があると考えております。そのためには、今後の方向性、経済波及効果、地域や市民とのかかわりを明確にした羅針盤としての観光振興プランの策定が必要と考えております。現在本市では、国土交通省の観光まちづくりアドバイザーを招いて、プランの素案づくりを行っているところでございまして、早い時期に関係業界に参画を呼びかけるとともに、市民から幅広い御意見をいただきながら、プランの策定に取り組んでまいりたいと考えております。以上でございます。
三宅隆介
歴史的な視点で言わせていただきますと、政令指定都市の中でも、川崎市は城下町の伝統を持たないまれな都市だと思うんですが、御承知のとおり、例えば仙台は青葉城があり、名古屋には名古屋城があり、大阪には大阪城があり、広島には広島城があり、北九州市には小倉城があるなどといった、城下町がまちの景になっている。一方、横浜や神戸は、貿易港として西洋文明の輸入基地としてさまざまな文化を取り入れて発展をされてきたという歴史がある。それに対してこの川崎市は、ちょっとまれな都市形態をしているというのが特徴的だと思うんですけれども、それだけに、逆に言えば他の都市に比べて個性を出せるような条件も整っているんじゃないかなという気もいたしますので、そうした中で、さまざまな民間の知恵を全国あるいは世界から取り入れられるような仕組みを、スピード感を持って取り組んでいただけますことを強く要望させていただいて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。