現在のグローバリズムは1980年代からはじまりました。
グローバリズム時代とは、モノ・ヒト・カネが国境を越えて自由に移動するボーダレス時代のことです。
実は、かつてもグローバリズムの時代がありました。1820年頃から1920年頃までのおよそ100年間も、まさにグローバリズムの時代です。そのころのグローバリズムは帝国主義を成立させていて、それぞれの白人宗主国は植民地の主権を奪い、国境を越えてモノ・ヒト・カネを移動させることで所得を吸い上げていた時代です。しかし、それを主導してきた大英帝国の覇権が衰えると同時にグローバリズムは幕を閉じることになりました。
二度目となる現在のグローバリズムも、やはり英国からはじまりました。
1970年代の世界経済はスタグフレーション(インフレ的不況)に見舞われて苦しんでいました。そのなかで英国はサッチャー首相が旗振り役となって、いわゆる新古典派経済学にもとづく構造改革を断行することでいち早くスタグフレーションを克服します。ご存知の通り、米国ではレーガン大統領が同じことをして克服します。
そのとき、なぜか新古典派経済学の勝利が資本主義の勝利と誤解されつつ、圧倒的な軍事力をもつ米国を覇権国として新古典派経済学にもとづく経済思想がそれこそボーダレスに広まってゆき、グローバリズムが進んでいくことになりました。
英米によって幕が開かれたグローバリズムですが、1990年代にはヨーロッパがEUという枠組みを形成することでその先頭を走ることになります。いわゆるユーロ・グローバリズムです。
EU域内(加盟国内)では、モノ・ヒト・カネの移動は自由。各加盟国の金融主権を制限して共通通貨ユーロまでつくりました。
ここで英国がEUに加盟しつつも共通通貨ユーロには参加しなくて済んだのは、1992年のポンド危機でERM(ヨーロッパ為替相場メカニズム)を離脱せざるをえなかったからです。ERMとは、ユーロ導入前の事前準備として各EU加盟国が各通貨をお互いに一定の範囲内で変動させるようにしたシステムのことです。
そのユーロ・グローバリズムも、まさに「終わりの始まり」の時代を迎えています。
その最大の理由は、ご承知の通り6月のブレグジット(英国のEU離脱)です。あるいは2015年11月のパリ襲撃事件以降、域内では国境管理復活の兆しもでています。
そもそもEUは多くの問題点を内在させてきました。
例えば、欧州議会などには何の権限もなくEU官僚に力が集中し、硬直的な官僚制が敷かれていること。あるいは、域内を単一市場とする必要性から10万ページをも超える各種規制が存在していること等々。むろん、よく言われているように、各国の金融政策の自由が奪われている一方で、財政政策は加盟国ごとにバラバラであることや、生産力の差が財政力の差となって様々な矛盾を来していることも深刻です。
一方、米国でも、反移民・反ボーダレスのトランプやサンダースが躍進しました。
グローバリズム社会は所得で暮らすネイティブ国民を等しく貧困化させ、資本収益で国籍(国境)を意識せず暮らすことのできるグローバリストたちに富の大部分が集中する世の中です。いわゆる「1% vs 99%」の世界です。
端的に言うと、グローバリズムが進むことで、社会を構成するいわゆる「中間層」が破壊されるのです。中間層が破壊されると、当然のことながら社会は不安定化していきます。
おそらくユーロ・グローバリズムは徐々に融解していくことでしょう。
その泥船からいち早く脱した英国の選択は正解だったと思います。
歴史に学ぶべきは、かつてのグローバリズムの幕を開けたのが英米なら、その幕を引いたのも英米であったことです。
今、1980年代以降に英米が開いたグローバリズムは、英国のEU離脱や米国における反グローバリズムの動きによって、その幕を閉じようとしています。即ちボーダレス時代は終わろうとしているのです。
なのに・・・安倍政権は小泉政権時代に強化されたグローバリズム路線をさらに強化しようとしています。
そしてもう一人、マヌケがいます。
以下は、某・政令指定都市の市長さんの言葉です。少し長いですけど、せめて赤文字部分だけでもご高覧ください。
『ヒト、モノ、カネ、情報などが、国境を越えて猛烈なスピー ドで移動する現在、グローバル化の進展は、私たちの生活に様々な影響を及ぼしており、市民や企業等の活動と世界との関わりはより深く、広くなっています。 また、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定し、世界の注目が我が国に集まる中、本市において もこれをひとつの目標にし、海外により開かれた魅力あるまちづくりを進めていかなければなりません。
これまでも本市では、多文化共生社会の実現に向けた取組をはじめ、海外諸都市との友好親善交流、産業交流、国際協力・貢献など様々な分野にわたる施策を推進してまいりました。このたび、新たに策定した「〇〇市国際施策推進プラン」では、〇〇がめざすグローバル都市像として『国内外から行ってみたい!住んでみたい!働いてみたい!そして市民が住み続けたい!「世界をひき寄せる真のグローバル都市 〇〇」を掲げ、〇〇が持つ強みと魅力を最大限にいかしながら本市の国際施策を計画的、総合的に推進し、国内外から選ばれる都市「〇〇のまち 〇〇」の実現をめざしていくこととしています。
今後、ますますグローバル化が加速し、本市を取り巻く社会経済状況が大きく変化していく中で、もともと多様性に富んだ〇〇のまちをさらに発展的に昇華させていくため、市民、市民団体、企業など多様な主体と連携し、〇〇が持つ無限のポテンシャルをいかし、本市全体でめざすグローバル都市の実現に取り組んでまいりますので、 引き続き御理解、御協力をお願いいたします。 最後に、プランの策定に御尽力いただきました、プラン懇談会委員の皆様、貴重な御意見をお寄せいただきました市民の皆様、関係機関、団体の皆様に心から御礼を申 し上げます。』
(平成27年10月「〇〇市国際施策推進プラン」より)
ねっ・・・この人、何も見えていないでしょ。