9月13日、厚生労働省は2015年度の概算医療費は41.5兆円(前年度比3.8%増)になったと発表しました。
それを日本経済新聞が記事にしていますが、れいのごとく行間からは「だから緊縮財政が必要じゃないか」というニュアンスが伝わってきます。
『医療費41兆円、膨らむ薬代 15年度3.8%増
5年ぶりの伸び率
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS13H4O_T10C16A9MM8000/
医療費の膨張が止まらない。厚生労働省が13日発表した2015年度の概算医療費は41.5兆円と、前年度に比べ3.8%増えた。高齢化に加えて高額な新薬の登場で調剤が9.4%伸び、医療費の増加率は5年ぶりの大きさとなった。抗がん剤などの高額薬は増え続けており、今後も医療費は膨らむ。皆保険制度の維持には薬価制度の見直しが欠かせない。(後略)』
しかしながら、高齢化が進む我が国において医療費が膨らんでいくのは当然のことです。どんなに医療費が増大しようとも、それに伴って名目GDP(税収)も増えていけばいいわけで何ら問題はありません。それに医療費だって立派な需要項目(GDP=国民経済)の一つです。であるからこそ、一刻もはやくデフレを脱却しなければならない、という記事にはならないところが日本経済新聞ですね。
一方、記事の後段にありますように、医療費が嵩んでいる要因の一つに薬価の高まりがあります。それは事実です。
この薬価高を牽引しているのは米国の製薬会社の医薬品です。
現在、米国および米国の製薬会社は、メイドインアメリカの医薬品をできるだけ高く売りたいがために、2年に1回行われている日本の薬価制度を見直す会議に米国の製薬会社関係者を参加させろとまで言っています。(TPP交渉)
こうした流れの中で薬価が高くなっている問題と、高齢化に伴って医療費が増えている問題を切り離して議論する必要があろうかと思います。
高齢化によって医療費が高まるのは仕方がないとして、薬価の高額化には大きな問題があります。
ご承知の通り、診療サービスをはじめ医療機器・医薬品等の分野は国民生活上の安全保障分野です。
つまり、おカネがないから薬を買えない、では困るのです。「薬」という飲めば助かるが飲まなければ死んでしまう、という重要な製品をネオリベラリズムの名のもとに市場原理にさらしていいのでしょうか。因みに、米国は完全にそうなっています。
厚生労働省はジェネリック医薬品の使用を促すことで医療費の伸びを抑制しようと試みてきましたが、高額な新薬が次々とでてくる現状では効果は薄いようです。
そのため、厚生労働省は高額医薬品の一部を特例的に引き下げる制度を今年度より導入しましたが、それでも追いつかないようです。
このうえは新たな法規制を整えて、もっと大幅に高額医薬品の薬価を引き下げることが必要になるわけですが、そこでネックになるのがグローバリズム(株主資本主義)です。
薬価を抑制すれば国民の医療費負担は減りますが、製薬会社に投資している株主の利益は確実に減ることになります。
ここでも・・・
国民の安全保障 vs グローバリズム
の対決があるのです。