今朝のテレビ番組(経済番組)を観ていたら、あるエコノミストらしき(?)人が、
「今後は企業の海外M&A等をもっと増やしていく必要がある。それにより株価を刺激することが可能だ」
という趣旨の発言をされていました。
肩書をよく確認していなかったので「らしき人」ですみません。
ご承知のとおり、M&Aは企業による合併(M)や買収(A)のことです。要するに、国内企業がもっと海外の企業を合併したり買収したりすれば株価があがるだろう、と彼は言うのです。
別にそのことを否定するつもりは毛頭ありませんが、国内企業が海外でのM&A事業を展開しても直接的に日本のGDP(国民経済)には影響しません。ただ買収(合弁)した企業が利益を上げれば日本の所得収支が増えますので、結果、経常収支が増え、対外純資産が増えることにつながります。それはそれで国益です。
何よりも、M&Aに成功した企業の株価は上昇しますので株主(グローバル投資家)の利益になります。
ですが、現在の日本の最大の課題はデフレによってGDP(国民経済)が成長しないことにあります。
GDP=所得=国民経済、です。
株式の配当がどんなに増えてもGDP(国民経済)にはカウントされません。グローバル投資家たちは別にGDP(国民経済)が増えなくても国境をこえてキャピタルゲインや配当金を確保できればそれでいいのでしょうけど。
デフレを脱却しGDP(国民経済)を成長させなければ国民は豊かになりません。繰り返しますが、豊かさの定義は「所得が増えること」です。GDP(国民経済)が成長していく過程で株価が上昇していくことが自然な姿です。
それに現実には、下のグラフのとおり国内企業の対外直接及び證券投資は既に増え続けています。
なぜ、増えてきたのでしょう?
その理由を下のグラフがよく示しています。グラフはアベノミクス以降の国内企業の内部留保の推移です。
上のグラフはアベノミクス以降の数字ですが、それ以前から内部留保は右肩上がりで増え続けています。
即ち、デフレという需要の不足によって国内に投資先のない企業は内部留保を貯めていく一方で、海外への直接・證券投資を増やしてきたのです。
もしこれら内部留保や、対外投資に向かっていた資金が国内への投資や消費に回っていたのなら、まちがいなく我が国の名目GDPは拡大し、国民の所得は増えていたことでしょう。
よって、今の日本に最も求められているのは、一刻も早くデフレを解消して企業に投資先を与えることです。
なのに・・・先述の「らしき人」は、国民経済のためのデフレ脱却を無視して、対外投資を拡大させれば株主利益だけは確保できる、と言う。
このように国民の所得よりも株主の利益を優先するのがグローバリズムでありグローバリストです。
現在、テレビの経済番組等で解説する人たちは大概がこの種の人たちです。視聴者に株価への期待感を植えつけ、株式市場への投資を促すのが彼らの使命であり役割なのです。