昨日(8月2日)、『未来への投資を実現する経済対策』が閣議決定されました。
結局、総額で28.1兆円規模になりましたが、真水(財政出動)は国・地方合わせて7.5兆円で、政府が民間にまた貸しするいわゆる財政投融資で6兆円、残りは政府系金融機関等の融資枠の拡大とのことです。
需要不足(デフレギャップ)を埋める真水が7.5兆円ではおそらく不充分でしょう。藤井内閣官房参与はデフレギャップを20兆円程度と推定されていますし・・・
驚いたのは、対策の内訳をみると「21世紀型のインフラ整備」は、わずか1.7兆円だったことです。財政出動したくない財務省の意地でここまで最小化されたのでしょうが、そこまでインフラ投資を嫌うこともないでしょうに。
また、対策の大部分を「民間投資に対する融資」が占めていますが、この規模の公共インフラ投資と需要創造(真水)では、民間部門が本当に投資してくれるかどうか極めて不透明です。
デフレが克服されないかぎり、民間部門が本気で投資を拡大することはありえないと思われます。
そこで改めて、民間投資にかかわる指標をみてみたいと思います。
上のグラフは、機械受注統計調査の長期データです。
この統計は、機械等製造業者の受注する設備用機械類の受注状況を調査したものです。
調査される機種の対象は、原動機、重電機、電子・通信機械、産業機械、工作機械、鉄道車両、道路車両、航空機、船舶を大分類としていて、設備投資に関連を持つ注文機械製品及び一部の見込生産の機械製品を調査対象にしています。(部品、修理、補修工事、及びこれに付帯した据付工事も含みます)
この指標をみることで、民間部門の投資状況の一部を把握することができます。因みに、このグラフでは船舶や電力などのような特殊要因は除いています。
グラフをみると、デフレ期の直中にありつつも、リーマン・ショック(赤丸①の部分)以前の機械受注は毎月約1兆円弱ぐらいありました。
しかし、リーマン・ショックで4割も減です。以降、僅かながらにも回復傾向にありましたが、未だ8千億円程度であり、リーマン・ショック以前の約1兆円に比べて2千億円程度も足りません。
赤丸②の2014年4~6月期の減少は、ご承知のとおり消費税増税(5%→8%)の結果です。これがなければ、機械受注は順調に回復していた可能性大です。明らかに消費税の増税が水をさした形になっています。
デフレ期においては(インフレ期は別)、政府が需要不足を埋めないかぎり、民間部門が自発的に投資を拡大することはありません。
逆に、もし政府が大規模プロジェクトに対して継続的に財政出動することをコミットメントしたのなら、民間投資が促される可能性は充分にあります。
それが、藤井内閣官房参与のいう「脱出速度」論です。
果たして今回の経済対策で充分なる脱出速度を確保することができるのか。エンジンの外見は大きく見えますが、実質的な排気量は小さいように思えます。