8月22日に総務省から発表された人口推計(平成28年8月1日暫定値)によると、15~64歳の生産年齢人口比率は次のとおりです。
女性は既に60%を切っており、男女計においても、いつ60%を切ってもおかしくない状況になりました。我が国は、デフレを脱却できないままに生産年齢人口比率低下社会、即ち人手不足社会を迎えようとしています。
とりわけ、建設、介護、運輸の世界では既に人手不足がはじまっています。
例えば川崎市ではここ数年、入札が不調となる件数が増え、直近の入札不調率は10%を超えています。10回に1回以上の割合で入札が不調に終わっているのです。
入札不調率が高まっている主因は、役所の示す設計単価が実勢価格に合わないためです。
例えば人件費。
一昨日のブログでも申し上げましたように、我が国はデフレかつ自然災害大国であるにもかかわらず公共投資を削減してきました。そのことと、15~64歳までのいわゆる生産年齢人口比率の低下が重なり、上のグラフのとおり全国的に公共工事の設計労務単価が上昇しはじめたのです。
しかしながら、生産年齢人口比率が低下するからといって、これからの日本が衰退するという話しではありません。
我が国が戦争に負けた昭和20年時点の生産年齢人口比率は何と58.1%(男女計)で現在の日本よりも低い水準でした。1955~1974年のいわゆる高度成長期の生産年齢人口の増加率はわずか1.6%程度で、うなぎ上りに増えていたわけではありません。
なのにそこから我が国は、あの奇跡の戦後復興、つまり高度経済成長を成し遂げたのです。
なぜ、成し遂げることができたのか?
それは・・・生産年齢人口比率が低いなかでも、外国から移民を入れることなく、一人当たりの生産性を向上させるための投資を官民あげて怠らなかったからです。
政府は公共投資の拡大でインフラを整備し、企業は設備投資と人材投資を拡大することで、労働者一人当たりの生産性を向上させることに成功したのです。(もし移民を受け入れていたら不可能だった)
労働者一人当たりの生産性を向上させることを、経済成長といいます。
1998年のデフレ突入以降、我が国政府は公共投資を減らし、企業は設備投資を減らし内部留保を増やしています。かえってそのことが名目GDPの縮小をまねいて税収を減らしました。
その税収不足の穴埋め財源として赤字国債を発行してきたために政府の負債残高が拡大する、という悪循環に陥ってしまったのです。
かつて整備したインフラが更新時期を迎えています。加えて、生産年齢人口比率の低下というまさに高度成長期前と同じ状況になっています。
そうです。我が国は、再び高度経済成長するというビックチャンスを迎えているのです。
①償却期間を迎えたインフラ、②低下する生産年齢人口比率、③底知れないデフレ、この3大ピンチをいかにチャンスに変えることができるか、そこに我が国の命運がかかっています。
愚将はチャンスをピンチに変え、名将はピンチをチャンスに変える。