昨日(7日)、BSフジの『BSフジLIVE プライムニュース』という番組で、各党による政策討論会が行われていました。
出演者は、民進党からは長妻昭衆議院議員、自民党からは田村憲久衆議院議員、ほか各党ひとりずつ。
ちょうどテレビをつけたとき、討論テーマが雇用問題に入りました。長妻氏も田村氏も、ともに厚生労働大臣経験者です。なので、中身のある激論を期待しつつ拝見。
自民党の田村元厚労大臣が、れいのごとく「アベノミクスで正規雇用は増えている」とやります。
どうしたことか、長妻元厚労大臣を含め、他党の議員も誰一人として、突っ込みを入れない。突っ込みが入らなければ、結果として事実や現実とは無関係に既成事実化されることになります。
この番組を視聴した有権者は、
「なんだかんだいっても、アベノミクスで正規雇用は増えているのかぁ」
と理解されたことでしょう。
田村元厚労大臣の言う正規雇用増とは、下のグラフの平成26年から27年にかけての数字のことを言っています。(グラフは各年の平均値)
第二次安倍内閣は平成24年末に発足しました。
グラフのとおり、第二次安倍内閣発足以降の正規雇用数は36万人減っています。
よって、田村元厚労大臣の発言に対して、「それは、いつの時点からいつの時点までの数字ですか」と、とりあえず突っ込みを入れるのが野党議員様のお仕事です。
アベノミクスが正規雇用を増やした、というのであれば、内閣発足時の3,340万人を超えていなければなりません。
政治家は、経世済民を達成するために存在する専門職です。専門職らしく、与野党を問わず数字や言葉に対しては常に正確性を期し誠実かつ丁寧であってもらいたいものです。
アベノミクス第三の矢の成長戦略とは、もろに構造改革そのものですから正規雇用が減って当然です。
ただ、平成26年から27年にかけて正規雇用が短期的に増えたのは、円安によって輸出企業の売上が名目で増えたことと、生産年齢人口が減少したことに起因しているものと推察します。円安をもたらしたのは黒田日銀による量的緩和ですので、その意味で僅かながらもアベノミクス(第一の矢)効果といえるのかもしれません。
しかし期待の円安も、いまや円高基調に変わっています。
詰まるところ、デフレを脱却できない以上、円安は一時的なもので終わってしまうのです。アベノミクスが成功したといえない理由はそこにあります。
彼らが議論(討論)を通して国民に示すべきは、アベノミクスという経済政策がデフレ脱却という目的を達成できているのかいないのか、の科学的な証明です。専門職らしく・・・