本日の日本経済新聞に、2015年度の都道府県と市町村の地方税収が過去最高になった、と報じられています。
『地方税収、過去最高40兆円超 15年度
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO04649500Y6A700C1EE8000/
都道府県と市町村の地方税収が2015年度に40兆円超と過去最高になったもようだ。14年度の38.4兆円から増え、これまでの最高だった07年度の39.5兆円も上回った。14年4月に消費税率を8%に上げたことで消費税収が増えたほか、円安などで好調な業績が目立った15年3月期決算企業からの税収も増えた。(後略)』
インフレ率も実質消費もマイナスで、賃金も増えていない。それに今やマイナス金利になるほどの資金需要不足、即ち日本経済は未だデフレの真っただ中にあるというのに、なぜ地方自治体の税収だけが増えているの?、と疑問に思われるかたもおられるかと存じます。
理由は簡単で、記事にもありますように、増えた理由は、①消費税増税による増収、②金融緩和による円安です。とりわけ、川崎市のように輸出企業が集積している自治体は、税収構造も輸出企業に依存しているため為替の影響(②)を強くうけます。要するに川崎市の場合、誰が市長をやったって円安になると税収は増える構造になっています。
ご承知の通り、黒田日銀の金融緩和政策で円安になったことで、為替という物差しが変わります。そのことで売り上げが上がり税収が増えました。
例えば、1ドル80円のとき「10億ドル」の輸出をすると、売り上げは「800億円」。
一方、1ドル120円のとき「10億ドル」の輸出をすると、売り上げは「1200億円」になります。為替の変動(円安)だけで、輸出量に関係なく400億円もの売り上げ増になります。
さて、日本経済新聞は記事にしていませんが、①と②の理由に付け加えて、もう一つ重要な③つめの理由(要素)があります。
・・・それは、なんといっても各地方自治体によって遂行されている緊縮財政です。
入るを量りて出づるを制す、という言葉がありますが、これは企業や家計などの民間部門の発想です。通貨発行権や徴税権をもつ政府(地方自治体には通貨発行権はない)部門がデフレ期にこれをやると、まちがいなく国民(企業や家計などの民間部門)は貧乏になります。
上のグラフのとおり、海外部門をのぞくと、政府部門と民間部門のそれはグラフのうえで上下対象となります。すなわち政府部門が黒字化すれば、一方の民間部門は赤字化することを意味しています。
このグラフでは民間部門が一括りになっていますが、民間部門は主として企業部門と家計部門からなります。本来、借金(投資の為)すべき対象は企業部門です。政府部門はトントン、家計部門は黒字化、というのが理想的な状態です。ですがデフレ期の今、それは不可能です。
よって、デフレ期の今、政府部門こそが投資や消費という形で支出を増やしてデフレギャップを埋めるべきであるのにもかかわらず、地方行政を含めた政府部門が緊縮財政によって強引に黒字化することで民間部門の資産を減らしています。
とはいえ企業部門はデフレでほぼ投資先がないので日本企業の内部留保は貯まっています。よって、赤字化を強いられているのは主として家計部門ということになります。
要するに緊縮財政や増税で家計を赤字化(貧しく)しておいて、「お陰様で川崎市は黒字化しました」と言っているに等しい話なのです。
当ブログでも、何度も指摘しているとおり、 国民を豊かにして税収を増やし行政の収支を均衡させるのが善です。国民を貧しくして行政を黒字化させるのは悪なのです。
因みに、現在は為替相場は円安から円高基調に変わっています。また、国債の枯渇によって日銀の量的緩和も終焉を迎えつつあります。当然それも円高要因です(但し、政府が国債を発行して財政出動すれば別)。円安の恩恵をうけてきた川崎市政は、今度は円高のしわ寄せをもろに受けることになります。その対策は充分にできているのでしょうか。
今度は、
「本市は税収が減ったので、もっと緊縮財政をしまーす!」
とか真顔で言いそうで怖い・・・