今朝の日本経済新聞に次のような記事が掲載されていました。
『地方の技術を海外へ 支援組織、9日に発足
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H41_Y6A600C1PP8000/
政府は9日、地方の中小企業や大学の高度な技術を海外市場につなぐための専門家による支援組織を発足させる。IT(情報技術)や機械、金融、コンサルタントなどの分野に精通した25人を「グローバルコーディネーター(GCD)」に任命し、協議会を構成。地域経済をけん引する中核企業の創出を後押しする。5年で1千件の事業化をめざす。(後略)』
「日本の技術を海外へ」というスローガンは毎度お馴染みです。
国政はもちろん、地方行政でもしばしば登場するフレーズの一つです。
そこで気になるのは、このことの真の意味をどこまで理解して提唱しておられるのか、という点です。
例えば、その技術を確実に知的財産化したうえで、開発途上国などに最初はタダで普及し、やがてその国のインフラ等のシステムを抑え、結果として我が国のソフトパワーを強化する、即ち国益を確保する、という長期的でシタタカな国家戦略に基づくものであるのならまだしも・・・
あるいは、その技術に関する国際基準(またはアジア基準)をやがては日本が主導する、という戦略でもいい。
要するに、これらのことを内外に公言することなく、いかにも品よく、他国から恨まれることなくむしろ尊敬されつつ、シタタカに遂行すべきデリケートな案件なのです。
ところが、たいていの場合、政治家であれ行政マンであれ、この手の提唱をする人々は、どうもカモネギ的な技術供与程度の発想しかない点が懸念されます。
川崎市政でも、「環境技術を中国へ」という軽薄な物言いをよく耳にします。そこにいったいどんな戦略があるのか、が問題なのですが、よくよく確認するとほとんどの場合、何もありません。
技術を輸出してはみたけれど、感謝されておしまい、あるいは技術を奪われておしまい、では困ります。それに中国の場合は、ややもすると感謝すらされないでしょう。かの国からみたら、カモ(日本)がネギ(技術)を背負ってやってきた、くらいにしか思わないはずです。
そもそもからして軽薄なのは、輸出をしないと日本はやっていけない、という自虐思想です。
日本は内需主導で十分にやっていける先進国なのに。(はやくデフレを克服しないと、いずれ先進国でなくなりますが・・・)
例えば、
「これから日本は輸出を拡大します」と宣言するということは、
「これから日本は他国の所得を奪いに行きます」と言うに等しいことを彼らは知らない。
そんな大それた宣言をするような国家が世界から尊敬を集めることができますでしょうか。
我々日本人が認識しておくべきは、
輸出=外国から所得を頂戴する
輸入=外国に所得を差し上げる
という経済原則です。これは三宅隆介定義ではありません。国際収支の常識です。
よって、「我が国は、他国の皆様に所得を差し上げるほどに内需を拡大し、国際的貢献を果たしていきます」と言ったほうが、ちょっとわざとらしくなりますが利口なのです。
そのあたりの基本を抑えておかないと、外国から
「カモがネギを背負って所得を奪いに来た」
と思われてしまうのです。