今回の熊本地震により、これまで48名の方々が亡くなり、今もって2名の方の行方がわかっていません。避難者は8万人余りに上っているようです。
立て続けに地震が襲っているために、その危険性から家屋の中に入ることができず、やむをえず自家用車での避難生活を強いられている皆さんがおられるとのことです。その中にはエコノミー症候群でお亡くなりになってしまった方もいるというニュースも入ってきました。
同じ日本国民として切に心を痛めます。
こうした日々伝えられる被害状況を鑑みて、各地域でイベントや催しなどの中止が相次いでいるようです。
しかしながら、東日本大震災のときもそうでしたが、こうした被災していない地域での自粛ムードとその行為は、かえって被災者や被災地にとってマイナスの影響をもたらします。
経済活動が停滞してしまうと、当然のことながら税収が減ってしまい、十分な復興費用を確保することができなくなってしまうからです。
むしろ日本全国のできうる限りの人たちがご当地のモノやサービスを購入する。そのことが九州地方のGDP拡大につながり、結果として被災地の復旧復興に貢献することになります。
外国人投資家の取引が6割以上を占める株式相場がどれほど急激に値上がりしたところで、然したる経済効果はありませんが、GDPの拡大はモノやサービスを生産する国民の所得を着実に増やし、地域の生活インフラをも強化することができ、あまつさえ復興費用となる税収そのものを増やすこともできるのです。
国民経済には、二つの状態があります。
まず一つ目はインフレギャップ状態。潜在GDPという本来の供給能力に対して需要の方が大きく上回っている状態です。モノやサービスが常に足らない状態なので物価は上昇していきます。
もう一つはデフレギャップ状態。潜在GDPという本来の供給能力に対して需要の方が下回ってしまう状態です。モノやサービスが売れない状態なので物価は下落していきます。
ご承知のとおり、現在の日本はデフレギャップ状態です。というかこの19年間ひたすらデフレです。
デフレの恐ろしさは、たんに物価が下落することではありません。物価の下落とともに国民の所得をも下落させることにあります。
所得が減るからモノやサービスを購入しない、モノやサービスを購入しないから物価が下がる、というスパイラルを“デフレスパイラル”といいます。
また、デフレの最も恐ろしいところは、国力の源泉たるモノやサービスの供給能力を毀損していくことです。そのことは日本国の発展途上国化を意味します。
いま我が国ではそれが進んでいるのです。
下のグラフをご覧ください。内閣府が試算しているデフレギャップの推移は以下のとおりです。
このデフレギャップの試算方法ですが、実は竹中平蔵氏が国務大臣だった時代にデフレギャップをより小さく見せるためにそれまでの試算方法が変更されてしまいました。(注:内閣府はデフレギャップといわずGDPギャップといっています)
よって実際のデフレギャップは、グラフの数字よりもっと大きいはずです。
デフレ経済が続いている今、国民の個人消費や企業投資だけでこのギャップを埋めることは不可能です。
であるからこそ、スティグリッツ教授やクルーグマン教授らの助言どおり、地方自治体を含む政府こそがこれを埋めるべきときなのです。
国民経済の観点から、私たち日本国民一人ひとりが何をすべきかを考えるべきときだと思います。