過日の金融政策決定会合を受けて、黒田日銀は日銀当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用することになりました。
その目的は、例のごとく期待インフレ率を高めて実質金利を押し下げ、投資や消費を活性化してデフレギャップを埋める、ということでした。
しかし・・・
民間の金融機関が日銀にもっている当座預金残高(日銀当座預金残高)は既にマネタリーベースの7割を超えるほどに拡大されてきました。にもかかわらず、総需要は増えることなくデフレギャップは埋まっていません。
グラフのとおり、黒田日銀の量的緩和によって急激に日銀当座預金残高を増やしてきました。むろん、民間の金融機関による貸出を増やすためです。
それでも貸出が増えないために、この日銀当座預金の一部にマイナス金利を適用したわけです。
ところが、貸出先(運用先)のない銀行は顧客の預金金利を引き下げはじめました。
例えば、川崎市のメインバンクである横浜銀行は、これまで0.025%だった満期まで1年の定期預金の金利を、普通預金の金利と同じ0.02%まで引き下げました。
りそな銀行も、満期2~5年物の定期預金の金利を0.005~0.025%幅引き下げて年0.025%ということになりました。ソニー銀行も普通預金の金利を大幅に引き下げたようです。
三菱東京UFJ銀行は大企業などの普通預金に口座手数料を導入するという検討をはじめました。
このように、マイナス金利政策のシワ寄せが預金者に及ぶという本末転倒な話になっています。
これらの結果、どのような状況になるでしょう。
預金金利を引き下げられた預金者は金利収入が減ることになります。よって消費を控え貯蓄を増やそう、というマインドに入ります。
消費が抑制されると総需要が更に減退しますので、デフレ圧力になります。デフレ脱却のためのマイナス金利政策が、むしろデフレを促進しています。
民間需要の乏しいデフレ経済においては、政府こそが需要をつくる、という正しい政策にいつになったら気づくのでしょうか。