『時代は再び第一次世界大戦前~日本よ、備えはあるか』
第21回
アメリカが主導する一極秩序がいったいいつまで続くのかは予測しがたいわけですが、我が国軍たる自衛隊が「存在・抑止」「即応・対処」「準備・定礎」のそれぞれの役割を果たし、日本国の独立と平和を守っていくためにはその裏付けとなる財政的基盤が必要です。
よく反日反戦主義者たちが「日本の軍事費は世界有数の規模で軍事大国化している」とか言いますが、まずは軍事大国の定義を示してから発言してもらいたいものです。
そうした愚論はさておき、世界各国の軍事費を米$換算でランキングしていくと、当然ながらダントツなのはアメリカで、日本は第8位となります。
上のグラフは、世界の上位20位までを取り上げていますが、ふつう軍事費とは「防衛費」と「戦費」を合わせたものをいいます。防衛費はランニングコスト、戦費は戦争などの有事が発生したときに支出される臨時費用と思っていただければいいと思います。
因みに第9位の韓国の軍事費は日本国とほぼ同水準ですので、日本が軍事大国であるというのなら韓国も同様に軍事大国ということになってしまいますね。現在の韓国が軍事大国である、などという識者はほぼゼロでしょう。きちんと言葉を定義しないと、こういうことになってしまいます。
軍事大国というのは、軍事力を背景に国際政治を主導できる国家のことをいいます。その点、現在の世界で軍事大国といえるのは今はまだアメリカだけです。
また、軍事大国と軍事国家も似たような言葉ですが、意味はまるで違います。軍事国家というのは、北朝鮮のように国家予算の大部分が軍事費に費やされる国家のことです。
よって日本は、軍事大国どころか軍事国家でもありません。このように言葉をきちんと定義して使うことにより、客観的に物事をとらえることが可能となります。
ただ、軍事費を絶対値で比較することに、あまり意味はありません。
当然のことながら、その国の国力(国家の規模)に応じた軍事費で比較する必要があります。
軍事費は、いわば人間の血液でいうところの白血球のようなもので、一定の水準を満たしていなければなりません。例えば、白血球の数が一定水準を満たすことができないと、健康維持に支障をきたし、場合によっては人間社会で人並みのお付き合いをすることもできません。
国家も同様で、一定の軍事費(ここでは特に防衛費)を維持できないと、自国の独立と平和を守り、国際社会で一人前の国家としてお付き合いすることができなくなります。
では、一定の軍事費(防衛費)とはいくらでしょうか。
通常、国家の規模はGDPで表されます。世界各国の軍事費対GDP比でみると、国際的な平均値は約3%です。現在の日本は相も変わらずGDP1%程度(戦後ほとんどは1%未満)です。
仮に日本が防衛費を現在の3倍(GDP比3%)にしても、アメリカが文句を言うことは絶対にありませんし、懸念を表明することもありません。むしろ逆で、アメリカはこれまでにも、日本の防衛費の少なさを指摘してきました。
因みに、アメリカは日本に対して集団安保への協力を要請してきたのであって、集団的自衛権の行使を求めたことなど一度もありません。「そんな少ない防衛費で集団安保に協力できるのですか?」と言ってきただけです。アメリカが日本に対して集団的自衛権の行使を要請してくることなど未来永劫ないでしょう。
下の図は、先ほどの軍事費ランキングの上位20位の国々の、対GDP比をさらにランキングしたものです。
日本の防衛費がGDPの1%を超えられないのは、まさに戦後レジームです。
日本を戦後レジームから脱却させないことがアメリカの対日基本政策ではありますが、こと防衛費に関してはGDP比1%を守れ、などと日本に圧力をかけているわけではありません。
私たち日本国民の意思の問題です。