いよいよ、アベノミクス及び黒田日銀が行き詰まってきました。
もともとアベノミクス三本の矢は、デフレ脱却を目的とするものでした。
①の矢は、日銀によるマネタリーベース(日銀当座預金と流通する紙幣と貨幣の合計)の拡大
②の矢は、政府の財政出動
③の矢は、成長戦略
まず、日銀がコミットメントつきでマネタリーベースを拡大する。コミットメントというのは責任を伴う宣言(約束)です。黒田日銀は2013年4月に「2年後のインフレ率(物価上昇率)を2%にしますよ」というコミットメントをだし、日銀が民間銀行の所有する国債(政府の借用証書)を購入することで日銀当座預金(民間銀行が日銀にもつ口座)を増やしてきました。
上のグラフのとおり、日銀当座預金残高が2014年から急激に増加していることがわかります。現在(2015年12月)では、約250兆円にまで拡大しています。要するに、日銀当座預金を拡大することによって銀行の貸し出しを増やそうとしているわけです。
日銀としては、2%の物価上昇というコミットメント付きで当座預金を拡大すれば、人々は2%のインフレを期待するだろう。そうすると実質金利が下がるので、企業は銀行からおカネを借りて設備投資をすることになる。その結果、名目GDPが拡大してデフレを脱却することができる、というのが黒田日銀の筋書きでした。いわゆる期待インフレ率理論です。
ところが、10年満期の設備投資の金利水準が今や0.4%にまで落ち込むほどに、設備投資のために銀行からおカネを借りようとする企業は増えていません。
期待インフレ率理論を提唱したアメリカの経済学者ポール・クルーグマン氏ですらも、今ではこの理論が失敗だったことを認めています。
そのため下のグラフのとおり、長期金利は下がり続けており、企業の内部留保が増える一方です。
そこで今、更なる量的緩和(マネタリーベースの拡大)をするかしないか、という議論になってきているわけです。
ところが、緩和したくてもできない理由があります。それは、政府が新規国債の発行を抑制しているために、市場に出回っている国債(主として銀行が保有している国債)が枯渇してきているからです。
枯渇理由は、悪しき財政均衡主義からアベノミクス第二の矢である財政出動が不十分であるため、というか全くやっていないためです。(2013年だけ多少やりましたが・・・)
下のグラフをみても明らかなように、日銀が保有する国債は、もう既に全体の30%を占めて民間銀行保有分を上回っている状況です。
要するに、どんなに黒田日銀がマネタリーベースを拡大しても、政府が国債を発行する形でそれを借りて財政出動しなければ、デフレを脱却することはできず益々もって国家財政が悪化してしまうのです。
第三の矢(成長戦略)に至っては、ことごとく日本の安全保障システムを破壊し、デフレ化を余計に促進する構造改革ばかりで話になりません。
未だデフレの出口は全く見えず、アベノミクスも黒田日銀も深刻なほどに行き詰まっています。