『時代は再び第一次世界大戦前~日本よ、備えはあるか』
第25回
今年の夏には参議院選挙が施行されます。それと同時に、衆議院の解散総選挙も行われるのではないか、という憶測報道がでています。
来年4月の消費税再増税を予定どおり断行するのであれば、再増税の是非を問う「消費税選挙」にしたくない総理が年内解散を模索するのも当然でしょう。それに、衆参で2/3以上の議席を獲得したいとなると、年内同日という選択肢を念頭におくのも頷けます。
夏に参議院、冬に衆議院、と年内別々に選挙を戦ったばあい、現在の安倍内閣の勢いでは二つの選挙で大勝するのはなかなかに難しいのではないかと思います。といって、連立与党の公明党も同日選挙には反対しています。
衆議院解散総選挙が、再増税された来年4月以降になってしまうと、デフレ経済が益々深刻化していくことになりますので、解散権を行使できない総理になる可能性があります。ご承知のとおり、黒田日銀の量的緩和効果も空しく一昨年の消費増税によって日本経済は既に失速しています。
再増税はこれに更なる拍車をかけることになるでしょう。
ひょっとすると、再増税を延期して来年の解散を考えているのかもしれません。いずれにしても総理のみぞ知るところです。
報道ベースでは、安倍総理は次の総選挙を「憲法改正選挙」にしたいというご意向のようですが、憲法議論は果たして国民議論として熟しているでしょうか。
いつもいうように、未だ日本は戦後レジームの中にあり、国会議員たちの間ですら日本が未だ東西冷戦時代の延長にあるかのような憲法議論が平然と行われています。
こと戦後の憲法論議は、右も左もつねに「憲法問題=9条問題」でした。例えば集団的自衛権問題の際にも、右はアメリカに見捨てられないように行使を可能にせよ、といい、左はそんなことをしたらアメリカの戦争に巻き込まれる、とひたすらに反対しています。
要するに、右は「見捨てられ論」、左は「巻き込まれ論」ということですが、右も左も全く主体性がないという点で共通です。そしてその延長で「憲法=9条」を変えるかどうか、という程度の議論です。
そもそも憲法とは主権の発動です。このような主体性なき議論で憲法をどのように改正するのでしょうか。
例えば、「交戦権はこれを認めない」とする9条には大きな問題があるのも事実です。しかし国会議員を含めて多くの国民が交戦権を「戦争を交える権利」と誤解されています。
現行憲法には、9条以外にもまだまだ国民が知るべき問題点が存在しています。
国民的議論という抽象表現はあまり好みませんが、今はまだ国民的議論が十分であるとは思えません。国民一人ひとりが憲法についてもっとよく知り、考えていくことが必要だと思います。
しかしながら、国会とマスコミと市民団体だけで国民的議論を巻き起こすことには限界があろうかと思われます。事実、これまではそうでした。
そこで一つの提案です。
各地方議会のなかに『憲法調査委員会』を設置して、専門家を参考人として招致したり、各議員や会派による憲法観や憲法論の表明あるいは研究発表をしたり、そのうえで現行憲法について賛成反対双方の立場から議論をぶつけさせてみてはどうでしょうか。
その結果、自治法第99条に基づいて国へ意見書を提出する地方議会もでてくるでしょう。これまでの意見書のような抽象的で内容の薄いものではなく、具体的で中身の濃い専門的な意見書が全国の地方議会から提出されることになれば地方議会のスキルアップにもなります。
また、地元の議会であれば地域住民も傍聴しやすいでしょうし、地域住民の皆様にも請願や陳情を通じて地方議会レベルでの憲法議論に参加して頂くことも可能です。これぞ国民的議論です。
更には、自分の地元の地方議員がどのような憲法観をもっているのかということも解るようになりますので、このことは地方議会というより、地方議員のスキルアップにもつながります。
国であれ、地方であれ、議員と名がつく者は、一人ひとりがそれなりの憲法観をもっているべきだと思います。