2%の物価上昇をコミットメントしてきた黒田日銀が苦境にたっています。そのコミットメントの約束期限は、とっくのとうに切れているのですが、未だ以て物価が上昇しません。
わが川崎市の消費者物価指数の推移をみると、
昨年4月に消費税が増税され、その影響により瞬間的に物価は上昇したものの瞬く間に下落しました。2013年1月以来の前月比の推移は平均0.1%の微増に留まっています。大消費地に属す川崎市ですらこの数字ですので、地方都市にいたってはもっと悲惨な状況でしょう。
黒田バズーカなる量的緩和によってマネタリーベースは338兆円(2015年10月現在)を既に超えています。にもかかわらず、銀行貸し出しは依然として伸びず、貨幣乗数(政府と金融機関以外の経済主体が保有する現預金の合計をマネタリーベースで割った指数)も3を切っているという有様です。要するに、景気がいかに悪いか、ということです。
量的緩和で資金量を増やしても、それによってモノやサービスなどの付加価値の購入が増えなければ物価には影響はしません。
なぜ、付加価値の購入が増えないのか?
くどいようですが、それはデフレ不況で民間に投資や消費を拡大する意欲がないからです。そのうえ、政府および川崎市などの地方自治体までもが財政均衡主義とやらによって支出を引き締めています。結果、長期金利はいまや0.31%まで低下しています。このような低金利にあっても、貸出先(運用先)の乏しい民間銀行は結局のところ国債や地方債を買っています。
・・・・・・
先日、東京都小金井市にある『江戸東京たてもの園』に行ってきました。ここに、港区赤坂にあった髙橋是清邸の主屋部分が移築されていて見学できるようになっています。
髙橋是清公は、1929年にはじまった世界恐慌の際、大蔵大臣として金融緩和と財政出動という適切なデフレ対策を行い、恐慌に苦しむ世界の国々の中でいち早く日本をデフレから脱却させた名政治家です。因みに是清公は、226事件の際、この建物の2階で凶弾に斃れました。
ここを訪れ、是清公に思いを馳せながら、平成の髙橋是清の登場が急がれていることを改めて痛感しました。
一刻もはやくデフレから脱却しないと、わが国の国力低下に歯止めがかからず、川崎市はもちろん、日本のインフラが益々老朽化していきます。
復元された髙橋是清邸(江戸東京たてもの園)