厚労省が2日に発表した4月の勤労統計調査によると、物価変動の影響を除いた実質賃金指数は前年同月比で0.1%上昇した、という。
それをアベノミクスの御用新聞、日本経済新聞がうれしそうに記事(6月2日付け夕刊一面)にしていた。
上昇したといっても速報値なので、おそらく確定値では例のごとく下方修正されるだろう。そもそも実質賃金は3月の段階で23ヶ月連続でマイナスだった。仮に確定値で下方修正されなかったとしても、結局は2年間かけて元にもどったに過ぎない。
それよりも深刻なのは・・・
5月29日に総務省が発表した家計調査によると、二人以上の世帯の実質消費支出は前年同月比で1.3%の減少だった。昨年の4月といえば、消費税を増税した月で消費支出が大きく落ち込んだ。今年の4月はそれよりも更に下回ったのだから尋常ではない。デフレの更なる深刻化は必至だ。
そもそも「構造改革」と「緊縮財政」を断行すればデフレになって当然だが、日本はいつからIMF(国際通貨基金)の管理下に入ったのか。
EUをみてもわかるように、危機に瀕したギリシャやポルトガル(いわゆるPIIGSといわれる国々)に対して、トロイカ(国際通貨基金、欧州中央銀行、欧州委員会)は構造改革と緊縮財政を強要している。
トロイカのイデオロギーによれば、ギリシャやポルトガルで雇用が増えないのは①賃金が高いから、②労働者が解雇されないように守られすぎているから、ということになる。いわゆるグローバリズムの論理だ。
その結果、たとえばポルトガルでは、従業員を容易に解雇できるようになって、賃金は20%ダウンした。そのうえ労使間で結ばれていた協定も破棄されてしまい、今では、労使間の協定の下で働いている労働者はわずか6%しかいない。それでいて雇用は拡大していないという。ゆえにデフレが解消されず、国家財政も改善されない。
日本で最低賃金が最も低い県は沖縄県(677円)だが、ギリシャやポルトガルの最低賃金は今やそれを大きく下回っている。それは当然、グローバル投資家の利益となるのでトロイカはそれを是とし、アメリカはこの低賃金競争を「底辺への競争」といって喜んでいる。
ギリシャの財務省にはIMFのスタッフが常駐しているらしいが、我が国はトロイカやIMFの管理下に入っていないのに、アベノミクスの第三の矢(日本再興戦略)は、労働規制の緩和や外国人労働者の積極的受け入れなどなど、構造改革そのものである。
繰り返すが、総需要の不足している中で、こうした構造改革や緊縮財政を行えば、間違いなくデフレ化が一層進む。そして、その利を得るのは日本国民ではなくグローバル投資家だ。デフレは国力を減退させ、政府の負債比率をも拡大させる。だからこそ、正しいデフレ対応策が求められているのだが、現政権は構造改革と緊縮財政というトロイカ顔負けの更なるデフレ化政策をとっている。
グローバリゼーションの名の下に市場が統合され、自由にスピーディに無制限に国境を越えて資金を移動させることが可能となれば、国家も国民も金融市場の言いなりとなり国家の自立も主権も成立しなくなる。危機後のPIIGSや開発途上国はそのことを体現しているし、世界中の超低賃金労働者は今やグローバル投資家のいわば奴隷と化している。
国にも地方にも、グローバル化経済を声高にさけび推進する軽薄な議員がいる。はたして、どこまでグローバル経済の意味を理解して言っているのか。
例えば、バングラディッシュに行ってみればいい。グローバル企業の下請けとなっている縫製工場では、14~15歳くらいの女の子が一日5ドル程度の賃金で週70時間労働を強いられている。
「それこそが国際競争力だ」とでも言うのだろうか。バカも休み休み言え。