昨日の夜(日本時間)、G7が閉幕した。
安倍政権のリフレ政策に対して、世界が容認しているという識者もいれば、そうではないという識者もいるようだが、いわゆるアベノミクスを批判している人たちの顔ぶれを内外でみると、政敵たる日本の野党政治家をはじめ、円安によって不利益を被る勢力たちのようだ。例えば、利益の大部分をウォン安によって享受してきたサムスン(韓国)のように。
そもそも日本は為替介入によって円安誘導しているわけではなく、これまで主要国が行ってきたように金融緩和によって結果として円安になっているのだから四の五の文句を言われる筋合いもない。
それに、それぞれの国の金融当局がインフレを恐れ物価のターゲットを決めているのだから、懸念されているような通貨安戦争など起こるはずもないと思うが。
日本の財政が抱えている最大の問題は、赤字国債の発行をいかにして抑制するかである。赤字国債を発行せざるえないのは長期にわたり税収の落ち込みが続いているからだ。ではなぜ、税収が落ち込むのかといえば、名目GDPが成長しないからであり、名目GDPが成長しないのはデフレだからである。従って、デフレを脱却するという目的は正しい。
問題は方法論だが、いわゆるリフレ(通貨再膨張)と財政出動はデフレ脱却のための有効的な手段としても、消費税の増税は名目GDPの成長にプラスにはならない。
消費税の議論は別の機会に譲るとして・・・
問題は、アベノミクスの第3弾である成長戦略だろう。成長戦略とは構造改革のことを言っているのだと思われる。
下衆の勘ぐりかもしれないが、欧米各国が、特に米国が、日本の金融緩和と円安を容認した背景には、構造改革の名のもとに米国の要求を日本政府に飲ませるという交換条件があったのではなかろうか。
折りしも、米国とはTPPの協議が進んでいる。TPPは農業分野のみならず医療や司法制度などを含めて21分野にも及んでいる。
「日本のシステムを壊してでも、米国のシステムにアダプトしろ」というのがTPPだ。
米国はこれまで、繊維、自動車、半導体、牛肉、オレンジをはじめ、日米構造協議、年次改革要望書など、様々な経済圧力を日本に仕掛けてきた。あの悪名高き日米構造協議は「協議」であり、年次改革要望書は「要望」であったが、TPPは完全な「協定」となる。
円安容認の代償として、TPPでかなりの譲歩をしているのではないか、という懸念を抱いているのは私だけであろうか。
TPPについては「賛成」と言っても敗北であり、「反対」と言ってもともに敗北であるが、国会議員や政府高官の方々には、少なくともTPPによって米国が日本の何を求めているのか、についての核心的な認識だけはもってほしい。
例えばTPP交渉において「聖域」という言葉をつかうこと事態がナンセンスだ。「新たな貿易のルールをつくることには賛同しても、主権国家として関税自主権を手放すことはできない」という表現を使うべきだったろう。そのことにより交渉の余地は格段に広がる。「聖域」を認めるということは、関税自主権の喪失を原則的に認めることになるのだから。
米国にとってTPPとは、繊維、自動車にはじまり、日米構造協議、年次改革要望書の延長線上にあることだけはまちがいない。交渉にあたっては、各国の戦略や手の内を把握することが国益確保の前提となる。例えば、米国とオーストラリアとニュージーランドは農業分野においてどのような連携をとり日本に譲歩を迫ろうとしているのかなどについての情報収集はできているのか。
日本はまず、軍事・外交面のみならず経済面においても情報力(収集・分析・工作)を強化しなければならない。