川崎市殿町の国際戦略総合特区が生命科学分野の一大研究拠点として動き出しています。これら生化学をはじめ、航空産業や宇宙産業のほか、海洋、情報、医療、農林水産など、これらの分野は今後の世界を変えうる分野です。私は、こうした分野を国家経済戦略の中核におき知財覇権の獲得とその維持を図っていくことが国家的課題であると考えています。
その一方、大きな問題となっているのが、情報通信技術を用いて政府機関や先端産業を有する企業から機密情報を窃取するサイバーインテリジェンスや、政府機関を含む情報インフラ事情者等の機関システムを機能不全に陥れることにより社会機能を麻痺させるサイバーテロの脅威です。
こうした脅威から我が国の知財をどのように守っていくのかが、今後の日本の国家的課題となります。しかしながら、我が国は敗戦国の性であるのかもしれませんが、知財防衛に関する認識が非常に欠如しています。
例えば、殿町地区(国際戦略総合特区)でどんなに素晴らしい先端的技術を開発しても、それが外国に流出してしまっては国家国民の利益にはなりません。よって、先端的技術を有する企業の機密情報がサイバーインテリジェンスなどによって窃取されないよう、防御対策をとっていく必要性があります。
あるいは、本市が公権力によって集積している、住基ネットデータ、納税データ、社会保険や医療に係るデータ、これらもビジネス的観点からみれば貴重な地財資源であり、これらを完璧に管理することも地財防衛にあたります。今回、京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞を製作した業績によりノーベル生理学・医学賞を受賞されました。これも歴然とした知財の一つですが、言うまでもなく基礎研究の成果を実用化していくためには知的財産権の取り扱いが重要となります。
ところが、大阪大学の澤芳樹教授も次のような指摘をされています。
「大学の現場ではせっかくの研究成果を権利化せず垂れ流しており、知財の保全をどうしたらよいのか現場でよくわかっていない・・・」
本来、知財防衛は一義的には国の仕事です。しかし、知財防衛に対する国の認識はまだまだ低いというのが現状であると思いますので、こうした国策の足らざるところを地方行政が補うということも重要な地方分権であると考えます。
残念ながら、どの自治体でもそうですが、知財防衛を所管する課がありません。私の過日の議会質問にでも、知財防衛を取り扱う所管課がないために便宜的に危機管理室というセクションへの質問という形になりました。しかし本来、知財防衛は危機に際するものというより平常業務として取り扱われるべき課題です。
まずは、本市においても「知財防衛」という概念と認識を持ってもらい、早急に所管課を設置するべきです。そのことを9月議会において強く要望しました。