介護保険サービスには、「施設」と「在宅」の概ね2種のサービスがある。
例えば、常に介護を必要とし自宅で生活することが困難な寝たきりや認知症の方は、特別養護老人ホームなどの「施設」に入所して介護サービスを受ける。これが施設サービス。
一方、訪問介護や訪問看護など、ホームヘルパーや看護師等に「自宅」に訪問してもらって身体の介護や家事の援助などのサービスを受ける。これが在宅サービス。あるいは介護施設で入浴や食事等のサービスを日帰りでうける「デイサービス」(通所介護)も在宅サービスに属する。また、特別養護老人ホーム等の施設に短期間入所し、介護や機能訓練等を受けることのできる、いわゆる「ショートステイ」も在宅サービスに属する。
しかし近年、在宅サービスの一つであるデイサービスの延長として、介護保険上は認められていない宿泊をさせ、デイサービスとは別の料金を徴収している介護サービス事業者が少なからずいる。いわゆる「お泊りデイサービス」だ。
これらは旅館業法で定められた宿泊施設としての届け出もなく、介護保険で認められているショートステイのような充分な宿泊スペースや設備を確保することもなく運営されているという。酷いところでは、劣悪な狭い一室に大人数を鮨詰め状態にして宿泊させているケースもあるという。こうした状態を放置すれば、必ず事故が発生し、弱い高齢者が被害を蒙ることになる。
そこで、過日の川崎市議会・予算審査特別委員会において、「お泊りデイサービス」の実態を行政としてどこまで把握しているのか質した。
答弁によれば、川崎市内において介護保険サービス提供外の時間帯に14件の事故が発生し、インフルエンザ等感染症に関する報告も4件あり、平成21年以降、2件の死亡事例もあるという。
この「お泊りデイサービス」は介護保険上の適応をうけない介護事業者の自主サービスという法的な位置づけとなっており、必ずしも違法行為とはいえず行政としても強い監督権を行使できない。しかし、死亡事例もでていることから、今後なんらかの対策を講じていく必要がある。厚生労働省としても、この「お泊りデイサービス」を今後どのように規制していくのかを検討しているようであるが、国の結論を待っているわけにもいかない。
まずは各自治体で自主サービス部分についての基準やガイドラインをつくることが先決だ。例えば6畳間には4人まで・・・、部屋の温度は何度程度を保持すること・・・などなど。できればそうした基準を条例化することが望ましい。でないと行政として強い監督権を行使することができない。川崎市当局に対しても、急ぎ独自基準を策定し条例化するよう強く要望した。