地域医療の安定・充実のためには、
1.救急医療
2.高度な療養
3.在宅医療
の三つのシステムを一体的に整備していかなければならない。
とりわけ、わが国では在宅医療の整備が絶対的に遅れている。そのことが都市部において療養病床の不足を招き、さらには療養病床の不足が急性期の病床不足を招いて、結果として救急医療の遅れをもたらしている。
その一方で、昨年、イギリスの経済雑誌『エコノミスト』が「看取り」の質に関する調査を行った。
結論からいうと、日本は先進国の中で最下位という評価だった。上位となった国々の共通点は、病院ではなく自宅で亡くなる(看取られる)人の比率が高いということだ。欧米では死者の約8割が自宅で看取られているようだが、日本では死者の約8割が病院で亡くなっている。例えば川崎市では一昨年の死者数9.272人に対し、自宅で看取られた人はわずか145人しかいない。
自宅で死を迎えることだけが、けっして「質」の基準ではないにしても、スパゲッティ症候群といわれるような、体中に管を通された状態のなか、病院で最後を迎えることが本当に本人や家族の為なのかという疑問はのこる。
それに、病院での過剰な終末期医療が医療財政を圧迫している一面もある。例えば、75歳以上の医療費は、64歳以下の医療費の約5倍である。高齢者が多病であることを考慮に入れても、いかに病院で死亡する高齢者が多く、終末期に濃厚な治療が投入されているかがわかる。よって、在宅医療システムの確立は必ず医療財政の改善にもつながる。
お隣の横浜市では、在宅医療と在宅介護などを統括して取り扱う所管課があるが、川崎市の所管課は不明確で複数の部署のまたがっている。
昨年の12月議会の一般質問において、
①まずは所管課を明確にすること。
②地域医療審議会の下に「在宅医療推進検討部会」のようなものを創設し、行政主導で医師会や医療機関をリードして在宅医療システムを確立していくこと...
の二点を提案した。
それに対し、当局から「検討する」との答弁をもらった。②のような努力を続けていけば、やがて自主的な運動として在宅医療システムが構築されていくにちがいない。
なお、そのためには医師や歯科医師、薬剤師、看護師、介護士などとの連携も不可欠だ。