先日、米国政府が核の臨界実験を行った。
そのことの是非については別の機会に論を譲るとして、このことをうけて川崎市と川崎市議会は、それぞれ市長名と議長名で米国政府に対する「抗議文」なるものを送付した。
その抗議の内容とは、川崎市が昭和57年に制定した「核兵器廃絶平和都市宣言」に反し、軍縮という国際世論にも反する。だから「けしからん」というものだった。
米国政府に対し、そうした抗議文が送られたという事実は、議会事務局を通じて後から知らされた。各会派の団長には、それぞれ事前に議長からの報告があったらしいが、一人会派の三宅のところには事後報告となる。会派主義をとる議会制度では、それはそれとして仕方のないことなのであろう。
それよりも、この抗議文を送ることに異と疑問を呈する団長さんが一人もいなかったことが残念だ。
たいていの場合、こうした抗議文の案文は議会事務局によって作成される。作成された案文は原文のまま送付された。
そこで案文を作成した議会事務局にまず、抗議文の次の二点について確認をとった。
1.抗議文の中で「軍縮は国際世論である」とあるが、それは何の国際条約や国連決議を典拠としているのか? すくなくとも、この10年間の各国の国防費をみても、ロシア8.63倍、シナ3.92倍、米国2.26倍、韓国2.04倍、豪1.97倍、EU主要国1.31倍というように推移している。日本だけが0.98倍であり、これで国際世論が軍縮であるとなぜ言えるのか不思議である。
2.米国の臨界核実験は、いずれの国際法に違反しているのか? 法に反しない行為を批判する行為は一つ間違えばシーシェパードとかわらない。
議会事務局は、二点とも答えられなかった。おそらく他の議員に訊いても答えられないだろう。
まず、この種の抗議文をだすこと自体に、日本国民として「恥じらい」を感じなければならない。軍隊や核兵器さえ存在しなければ、この世はすべて平和になる式の「平和都市宣言」なるものも、国際社会においては極めて恥ずかしい宣言である。お喜びになられるのは、日本に敵意をもつ近隣諸国と、それらに通ずる一部の左翼運動家たちだけだ。
「軍拡がけしからん」と言うのなら、旧ソ連製空母「ワリャーク」を改良し周辺海域での機動力増強を図るシナに対しても抗議文を発するべきだろう。しかもシナは、「DF21D」という米海軍空母や在日米軍基地を直撃できる対艦弾道ミサイルを開発している。これらのほうが、日本と東アジアにとってよほどの脅威である。
べつに法律違反を犯しているわけでもない他家に対して、世間に通じない「我が家の家訓」をふりかざしてみても、ご町内の「変わり者」と思われるだけだ。
そもそも地方自治体には外交権はない。外国政府に対する抗議は、日本国民によって正当に選挙された国会における代表者を通じて行うべきである。ましてや、日本国籍をもたない外国人に裏口から参政権を与えるような理念条例をもつ自治体がやるべきことではない。
そんな恥ずかしい抗議文を送付する前に、世に弊害をもたらす「宣言」や「理念条例」、またそれらに基づく行政のムダ遣いを払拭することが、議会としての務めである。
国家観と生活者の視点にたって、必要な施策と不必要な施策を仕分けして、国家主権を害すことなく必要な住民インフラを整備創造することが政治の役割ではあるまいか。
未だ地方議会も戦後体制そのものである。一騎当千の覚悟で、これからも戦後体制に挑んでいきたい。