現在の朝鮮半島問題が本格的な有事へと変化するのか、それともまた延々とした6カ国協議に戻ってしまうのか、まことに予測しがたい状況になっている。また仮に6カ国協議に戻るとしても、早晩、有事が再発生することも考えられる。
この事態を前にして、日本は今、早急に準備しなければならないことがたくさんあるはずなのに、政権政党からも野党からも、国会議員の先生方からは全くといっていいほど具体策が聞こえてこない。まことに残念なことである。
朝鮮戦争は休戦中であるが、休戦が破られたとなれば、米韓両軍はもとより、休戦時にニューヨークで再結集を約束した朝鮮国連軍参加各国の多くがこの事態収拾のために参戦することになる。まずはそのことを認識しなければならない。
そして日本はこの朝鮮国連軍参加各国との間に「国連軍地位協定」(昭和29年)を締結しており、在日米軍基地のうち、嘉手納、ホワイトビーチ、普天間、横田、横須賀、座間、佐世保の7カ所を国連軍用基地として指定している。
有事になった場合、韓国内にある米韓両軍基地は脆弱となるので、米韓両軍を含む国連軍にとって日本の基地は極めて重要になる。つまりは北朝鮮の攻撃対象となるので、日本としては腹を括っておかねばならない。むろん、軍事施設だけが攻撃対象になるとは限らない。
例えば、北朝鮮が日本に対してミサイル攻撃をしかける可能性がある。これに対してはミサイル防衛と敵基地攻撃しか対抗手段がない。ミサイル防衛については、現段階では、技術的・数量的限界から日本全土を守ることは出来ないという。一方、敵基地攻撃については、現在の自衛隊では技術的に不可能なので、米韓軍頼みになってしまうのが我が国の実情だ。
もうひとつ腹を括っておかねばならないことは、難民の問題である。有事になれば、韓国から多数の難民が押し寄せることになる。そこに北朝鮮系の人々が相当数含まれることも予測される。何万・何十万ともなる難民を日本政府はどう受け入れるつもりなのだろうか、その準備が整っているとは到底思えない。
最も発生する可能性の高い問題は、日本国内におけるテロ・ゲリラである。北朝鮮には9万人の特殊部隊がおり、また韓国・日本国内にもこれに通ずる人々がいる、と言われている。日本には電源・水源・通信・交通機関に脆弱な施設等が多く、テロ・ゲリラにそれらを狙われたら日本人の生活は危殆に瀕する。
平成8年、韓国に26人の北朝鮮ゲリラが上陸した時、韓国軍は6万人の兵を何十日間も投入した。日本各地でこういう事態がいくつも同時に発生した時、日本の警察はどこまで対応できるのであろうか、また、自衛隊はどうするのであろうか。
国の安全保障に全責任を負っている我が国のリーダーからは、これら諸問題に関する明確なメッセージは伝わってこない。 総理大臣とは国軍の最高司令官である、という認識すらないのかもしれない。まこと、リーダー不在である。