国政では、政権公約である「子ども手当」の財源問題をめぐって大きな議論を呼んでいる。先の総選挙で提示された民主党マニフェストでは、「子ども手当」の実施にあたっては、その全額を国庫負担によって実施することが約束されていた。
ところが現在、「子ども手当」の地方負担として、個人住民税の扶養控除廃止による増収分や現行の児童手当の地方負担分を充てることが検討されている。このことは「地方分権」や「地方自治の本旨」にも反する重大な公約違反に相当する。
そもそもマニフェストの財源は「無駄遣いの根絶」や「埋蔵金の活用」、「租税特別措置などの見直し」によって創出される約束であった。とりわけ「子ども手当」の財源に関しては、「所得税の配偶者控除と扶助控除の廃止」で対応することをマニフェストに明記し、国民に説明するとともに、政府関係者も「住民税は含まない」「全額国で負担する」と明言していた。
にもかかわらず、国税の大幅な減収の中で、「事業仕分け」や「税制の見直し」で財源を捻出する見込みが立たなくなった現状から、地方固有の自主財源である住民税について公約にない増税を行い、その使いみちを国が勝手に決め、児童手当の地方負担分をまったく別の制度である「子ども手当」の財源としようとしている。このことは地方自治の主体性を無視するものである。
各地方自治体では、不況の深刻化による法人関係税の落ち込みから急激な税収減が予想されている。また、歳出面では臨時財政対策債の償還もあり、社会保障などの義務的経費が拡大するため、財源不足が一段と加速する状況にある。このため、それぞれの地方自治体は、程度の差はあれ徹底した自己改革を進め、厳しさを増す国民生活を守るために財源確保を図っている。
鳩山内閣は「地域主権」の確立をめざし、国と地方の協議の場の法制化にとりくむなど、地方分権改革に対するその姿勢は多くの国民から大きな期待を得ているところである。しかし、今回の「子ども手当」の地方負担の検討は、こうした地方自治体の改革努力を国の都合により無にするものである。
よって、「子ども手当」の実施にあたっては、その財源を地方負担に求めることなく、政府の責任において全額国庫負担で実施するよう強く求たい。