ある時期から、地方行政において「市民参加」という言葉が跋扈するようになった。
「市民参加」といえば、一見すばらしく民主的な響きのある言葉である。誰もがそう思うにちがいない。しかし、この言葉の背景には、実は恐ろしい革命思想が潜んでいることを指摘せざるをえない。
去る6月12日、日朝実務者協議が北京で行われた。その中で、「よど号事件」実行犯の引渡しに協力する旨が北朝鮮側から示されたらしい。「よど号事件」といえば、平成12年11月、大阪府内に潜伏していた日本赤軍の元幹部・重信房子が逮捕されている。その重信房子が逮捕された際、何点かの証拠品が当局により押収されている。
実はその証拠品から驚くような事実が発覚した。
以下、平成13年3月28日付け『産経新聞』の記事を要約する。その事実とは、日本赤軍が新たな「革命」を目指している、というものだった。日本赤軍とは、昭和44年に過激派『共産同』から分派した『共産同赤軍派』が母体となって成立し、武力による世界同時革命を目指す国際テロ組織である。その日本赤軍が、新たな革命の道具として、当時すでに消滅の危機に瀕していた社民党が利用されているという。
平成8年に党首となった土井たか子氏は「市民のきずな」をキーワードに「市民参加」を標榜し、平成9年4月、政策提言のための市民グループ『市民政治フォーラム』を立ち上げた。社民党が復活をかけた「市民参加政治」が日本赤軍に付け入るスキを与えてしまったという。
日本赤軍の戦略はこうだ。冷戦構造崩壊後、市民参加をキーワードに低迷脱却をめざしていた社民党に市民団体を通じて浸透し、やがて国政にも影響力をもとうというものである。
警視庁公安部と大阪府警の合同捜査本部が重信房子の所持品を調査した結果、「社民党との共同と工作」と題された文面が見つかったという。そこには、社民党について「社民の積極的役割である理念と国政の役割に対して、よりその力が発揮できるよう工作していく」などと位置づけられていた。要するに、社民党に対し「市民」を装って浸透工作を行い、革命を画策する、ということだ。
社民党が立ち上げた『市民政治フォーラム』は、様々な市民団体と交流をもっていた。その団体の一つに『希望の21世紀』という団体がある。この団体は、重信房子の所持品の分析から、平成7年6月、『人民革命党』の大衆部門として組織されたものであることが判明している。人民革命党とは、平成3年に重信房子が設立した革命組織である。
捜査関係者は、『希望の21世紀』の『市民政治フォーラム』への接触は、背後の日本赤軍・人民革命党が徐々に社民党に影響力を強めようとする浸透工作だったと指摘している。なお、捜査本部はこれまでに、社民党の保坂展人代議士の運動員や社民党系地方議員らの関係先を家宅捜査したという。(以上、平成13年3月28日付け『産経新聞』の記事を要約)
以上のような経緯からも解るように、そもそも「市民参加」という言葉は、日本悪しかれと願う反日左翼集団らの黒い意図をかくす煙幕となってきた。「革命」を正面きって掲げては革命が叶わなくなったため、「革命」という言葉を「市民参加」にすりかえたのである。
先述のとおり、地方自治では、行政が率先して、この「市民参加」を標榜している。標榜しているのみならず、困ったことに多くの地方自治体では、その美名のもとに様々な条例や制度が制定されているのである。それにより、かえって国民の主権が侵されているのもまた実状である。ここでは詳しく述べないが、いずれ詳細に述べたいと思う。
ともかく、左翼集団という組織自体は弱体化しつつも、その反社会的・反民主的な革命思想は、ゆるやかに浸透しているのである。