昨日(9月19日)、都内のとある会合で、川崎市内の農協関係者とお話しする機会を得ました。
私はその農協関係者に対し、いま国(自民党)の進めようとしている農協改革が我が国の食料安全保障を破壊する方向にあるという概略を示し「私も微力ながら川崎市議会で孤軍奮闘しているんですよ」と申し上げたところ、実に驚きの言葉が返ってきました。
その農協関係者は、「えっ、そんなに危うい改革なんですか?」とキョトンとされ、「農協がよくなるための改革だと思ってました・・・」と付け加えられました。
意外にもそのかたは、農協でもかなり幹部のかたです。
例えば、農地転用を認めるか認めないかを決定する農業委員会という組織が全国(概ね各自治体ごと)にあります。
これまでの農業委員会は農業従事者を中心に構成されていましたが、今後は農業に無関係な人たちで定数の半分以上を占めることが可能になりました。(昨年の農業委員会法の改正による)
なお、これまでの農業委員は、基本的には農業に従事する人たち(いわば専門家)による推薦という形で選任されてきましたが、今後は教育委員会の委員のように首長が任命する制度に変わりました。
つまり、「これからはグローバル化の時代だぁ~」とか「農協は保護されすぎているぅ~」とか「自給力の低下など外国産で賄えばいい~」とかの、いわゆる新自由主義派(グローバリズム派といってもいいし、市場原理至上主義派といってもいいし、新古典派経済学派といってもいい)の首長らに農業委員会の任命権を与えるとどうなるか!?
間違いなく、竹なんとかさん、新なんとかさん、三木なんとかさんたちと「考え」「思想」「利益」が共通するバリバリのグローバリスト連中が農業委員の過半数を占めることになるでしょう。
となると・・・
「この農地は利益が上がらないから早急に不動産転用したほうがいい」とか言って、その地域の農地は次々に農地転用され・・・
農地 → 農業以外のビジネス → 食料自給率の低下
という結果になります。
自給率が低下したら外国から買えばいいじゃん・・・という思慮の浅い発想は捨てなければなりません。大規模な自然災害や地球規模の天候不順、あるいは戦争や紛争などで我が国の海上輸送路に寸断が生じた場合、つまり有事の際には食料物資を輸入できない可能性が高くなるのです。食料のみならず安全保障というものは常に有事を想定してこそ、その価値があります。
農業委員会制度ひとつとっても、このように実に根深い問題をはらんでいます。
このほかにも、農業生産法人を事実上、外資が支配できるように改革されたり、やがては全農が株式会社化され、その子会社の全農グレインが米国のカーギルに買収されそうになっていることなど、現在進められている農協改革の本質について先述の農協関係者は全く理解しておられませんでした。
ちょっと暢気すぎねえか、農協っ!
地域農協の幹部がこれらの事実を全く把握されていないのは組織内の情報共有のあり方とかいうよりも、ご自身たちこそが我が国の食料安全保障を担っている、という認識が極めて低い点に問題があるのではないでしょうか。
因みに、全農グレイン(本社:ロサンゼルス)が米国カーギルに買収されると、遺伝子組み換え作物が大量無差別に我が国に流入してくることになります。全農グレインが農協(全農)の子会社として存在していることで、幸いにして今はそれが阻まれています。
私はべつに選挙等で農協に支援されているわけでも政治献金をもらっているわけでもありません。農協は自民党支持組織ですので、むしろ選挙的には敵です。
しかしそれでも、我が国の食料安全保障を守るために改悪を阻止していく所存です。
それから付け加えておきますが、私はべつに「現在の農協に一切の改革が必要ない」などとは言っておりませんのでご注意を。一切の改革を必要としない組織などこの世には存在しないものと考えています。
私は我が国の食料安全保障を破壊する制度変更について反対しています。我が国の食料安全保障が強化されるのであればべつに農協がなくなっても差し支えありません。
とはいえ、現実には農協を解体すると日本の食料安全保障は崩壊します。