国内投資家よりも外国人投資家による取引比率の高い東京証券取引市場では、円高になると株安、円安だと株高、という傾向が顕著です。
輸出企業にとって急激な円高は収益上の深刻な問題を及ぼしますが、同時に日本株を運用するグローバル投資家たちに対しても株の売り圧力をかけます。
とりわけグローバル投資家への配慮を優先する安倍政権は、株価(日経平均)の動向には常に神経をとがらせているようです。一説によると、首相官邸執務室には日経平均株価を示す掲示板が設置されているとか・・・(確認したわけではありません)
そもそも日本の円高基調はデフレにあり、デフレを脱却できない責任は政府側にあるものと考えます。
なぜならこれまで、黒田日銀は充分なる量的緩和を進めており、就任以降250兆円もの日本円を発行しています。
なのに一向にインフレ率が上がらないのは、政府が財政出動してこなかったからです。
※マネタリーベース:日銀が発行した日本円+政府が発行した貨幣。
※コアCPI:生鮮食品を除く総合消費者物価指数。
黒田バズーカという日銀の量的緩和(市中銀行からの国債購入)によって、マネタリーベースは400兆円に達しています。(日銀は市場から国債を購入することで日本円を発行し、発行された日本円は民間銀行が日銀にもつ当座預金に積まれていきます)
ところが、グラフ右軸のインフレ率をみますと、今年3月はマイナス0.3%、4月はマイナス0.3%、5月はマイナス0.4%、6月はマイナス0.5%、という惨憺たる結果です。
要するに、政府の財政出動なしに日銀の量的緩和だけで物価(インフレ率)を引き上げることは不可能なのです。
これ以上、日銀に何を求めるのでしょうか。
『政府・日銀、苦渋の臨時会合 具体策なく「張子の虎」
http://jp.reuters.com/article/boj-government-emergency-meeting-idJPKCN10T0TE
外為市場で18日、ドル/円JPY=EBSが一時100円を割り込んだ。財務省、金融庁、日銀は同日午後、臨時の三者会合を開催し、足元の円高をけん制。市場に対して政府・日銀の姿勢をアピールするのが狙いだが、具体策が伴わなければ「張子の虎にすぎない」(市場関係者)と効果を疑問視する声も出始めている。(後略)』
と、ロイターは「具体策なし」と日銀に対し批判的ですが・・・あるわけなかろうに、具体策があるのにそれを行ってこなかったのは政府財政当局なのだから。
手の尽きた日銀はマイナス金利政策をとりましたが、それは銀行の収益を圧迫させるに至り、むしろ預金者負担の引き上げ観測を高めデフレ圧力になっています。
マネタリーベースを400兆円にまで増やしつつもインフレ率がマイナスという結果に対して、誰も責任をとらない。
また、そのことを追求する野党もいない。
まともな経済政策どころか、現在の国会ではまともな経済論議すら行われていない現実を、我々国民は知るべきだと思います。