財務省は今年の4月、『日本の「財政」を考えよう』というインチキな財政学習教材を制作しました。
http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/zaisei201604.pdf
どうやら財務省には、「いずれニホンはシャッキンでハタンするぅ~」思想を全国民に周知徹底するためのハタンシソウ・インフォメーション・プログラムがあるようです。まるでGHQのウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(戦争責任周知徹底計画)みたいに。
とりわけ、この教材が問題なのは11ページ以降の、いわゆるシャッキンに関するくだりです。
お約束の「国の借金」という言葉です。本日はとりあえず、この部分にだけ突っ込みを入れておきたいと思います。
いつも申し上げておりますとおり、正しくは「政府の負債」です。統計上、この世には「国」という経済主体はありません。
経済主体とは、
①一般政府(地方政府及び社会保障基金を含めた言い方)
②金融法人(金融機関)
③非金融法人(企業)
④家計
⑤NPO
⑥海外
の六つです。
「国」=「国のすべての経済主体」という意味であれば、そのバランスシートは下のグラフのとおりになります。
我が国は(すべての経済主体合計としては)、343兆円の対外純資産国です。因みにこの343兆円は世界最大です。
たしかに中央政府と地方政府を合わせると1200兆円以上の負債を抱えていますが、その一方で550兆円以上の資産も保有しています。
差し引きすると、正確な一般政府の純負債額は約650兆円ということになります。むろんこれには地方政府分も含まれていますので、中央政府の純負債はもっと少なくなります。
何よりも、我が国は政府負債を他国の通貨やユーロなどの共通通貨で賄っている国ではありません。デフォルト(債務不履行)したアルゼンチンやギリシャとはその一点で違います。
我が国は“円”という自国建て通貨によって国債を発行しています。しかも経常収支黒字国であるため、90%以上を国内で消化しています。
経常収支黒字国、かつ自国建て通貨によって国債を発行している国が、負債を返済できなかったことがこれまでにありましたでしょうか。・・・皆無です。
「国の借金と政府の負債の違いはわかったけど・・・でもぅ、GDPの2倍を超える政府負債は問題なんじゃないのぅ?」
という疑問をお持ちの方々もおられることでしょう。
ナポレオン戦争後の英国は、政府負債÷GDP=280%という状況でした。政府負債対GDP比率は今の日本よりも酷かったわけです。しかし、英国はデフォルト(破綻)するぅ、なんて騒いだ英国人はおりません。
当時のイギリスも100%ポンド建て(自国通貨建て)で国債を発行していたからです。
その後、GDP(分母)を拡大させることで政府負債比率を低下させ、40年間で150%にまで改善しました。以後今日に至るまで英国は一度たりとも破綻などしていません。
日本も英国と同じように対GDP政府負債比率を低下させていけばよいのですが、うまくいっていません。なぜなら負債比率を低下させるほどに分母たるGDPが成長しないからです。
なぜGDPが成長しない?
・・・デフレだからです。
では、なぜデフレを脱却できない?
・・・「やがてニホンはハタンするぅ」という自虐財政思想が蔓延して、正しい財政政策(財政出動)がとれないからです。
『日本の「財政」を考えよう』というインチキ教材をつくった財務省は、今後これをどのように学校教育で活用していくかを検討中とのことです。
財務省に対してはインチキ教材の作成に疑を呈し、文科省に対してはインチキ教材の散布に異を唱えてくれる国会議員の先生を探しています。