10日に投開票される参院選に関して、時事通信が1~3日にかけて世論調査を行いました。
調査結果によると、安倍政権の経済政策「アベノミクス」について、
「評価する」が50.3%
「評価しない」が46.3%
とのことです。
この数字をみるかぎり、おそらくアベノミクスの是非について多くの人々がイメージ的に判断されているのではないかと思われます。
例えばテレビなどのメディア情報をみていると、与党は成功したと言い、野党は失敗したと言う。
それをみた視聴者側としては、
「アベノミクスがうまくいっているとは思わないが、民進党(旧民主党)に失敗したといわれても説得力がない」
「株価が一時的ではあっても上がったりしたから(なんとなくイメージ的に)うまくいっているのでは?」
「あの民主党政権に比べればマシ」
と、いったところではないでしょうか。
さて、アベノミクスを評価する際には、いくつかの注意点があるのですが・・・
その最大の注意点は、何といってもアベノミクスが途中で変貌したことです。アベノミクスは「3本の矢」から成っていますが、3本の矢のうち、2本の矢がいつのまにかすり替えられてしまいました。
1の矢.金融緩和 → 変わらず
2の矢.財政出動 → 緊縮財政
3の矢.成長戦略 → 構造改革
アベノミクスの最大の目的は、デフレからの脱却だったはずです。
もし、「金融緩和→財政出動→成長戦略」という当初の「3本の矢」が着実に実行されていたのなら、まちがいなく日本経済はデフレを克服することに成功し、国民が豊かになる経済をとりもどすことができたはずです。
しかし、いつのまにか財政出動が緊縮財政(消費税増税も含みます)へ、そして成長戦略が構造改革へと変貌してしまいました。その結果、脱却どころか益々デフレは深刻化しています。(※緊縮財政と構造改革はデフレ化政策です)
残念ながら野党もマスコミも、その一点において現実がまったく見えていません。野党の追及の仕方、マスコミの報道の仕方をみていると、そのことがよくわかります。
とりあえず、第1の矢である金融緩和(黒田バズーカによる量的緩和)だけは行われました。すると、黒田日銀が量的緩和で発行したおカネ(日本円)が為替市場に向かいました。結果、外貨が買われ円安になり株価だけは取り敢えず上昇しました。
また、円安という為替の物差しが変わったことにより、輸出企業の名目の売り上げが増えて税収増になりましたが、肝心の実質輸出は増えていません。
実質輸出は未だリーマン・ショック以前の水準を回復していません。
円安でも輸出が伸びない理由として、リーマン・ショック後に外国に出て行った工場が未だ国内に戻っていないこと、あるいは世界的デフレで外需が伸びていないことが挙げられます。
いずれにしても為替頼みの経済政策は健全ではありません。
アベノミクス成功・失敗の評価よりも、当初のアベノミクス(3本の矢)に戻し、着実にデフレを脱却することが与野党を問わず政治に求められている最大の課題だと思います。