先週末、イギリスの国民投票の結果をうけて株価が世界的に下落しました。
下落しましたが、株式等の金融経済の世界がどうであろうと、国民経済(実体経済)とは一義的には関係ありません。あくまでも一義的には。
とりわけグローバリズム経済以降は、実体経済の動向とは無関係に投機的なマネーが無制限に、そしてスピーディに世界を駆けまわるようになりましたので、何か国際的事件が起こると瞬時に株価が世界中で乱高下します。
株をやられている方には申し訳ありませんが、株の世界は相対取引なので、損をした人もおられれば、その反対側で得をする人もおられます。ただそれだけのことです。現に、イギリスの離脱派勝利で株価が下落しても、空売りしたことで利益を得た投資家もおられるでしょう。
国民経済(実体経済)は、そうした世界とは一線を画す存在です。
懸念されるのは、ようやく政府(安倍内閣)が財政出動という正しいデフレ対策をうとうとしている矢先に、
「イギリスの離脱問題によって株式市場に悪影響がでているからやっぱり緊縮財政に戻そう」
という話しになってしまうことです。
株式市場がどうであろうと、あるいはプライマリーバランス目標を一端は破棄してでも、財政出動という適切なデフレ対策をうってほしいと思います。
各金融機関が日本銀行にもっている当座預金には、黒田日銀の量的緩和以降、既に281兆円が積み上がっています。現在の預金準備率から換算すると、日本のすべての金融機関が貸出すことのできる資金の限度額合計は、なんと2京1600兆円になります。
ところが、5月末時点でのマネーストックをみますと、938兆円程度です。マネーストックは銀行の貸出し及び預金が増えないと拡大しません。また、マネーストックが上昇しないと貨幣乗数も上昇しません。
※補足1・・・
マネーストック=企業や家計など、政府や金融機関以外の経済主体が保有する現金預金の総額
※補足2・・・
貨幣乗数=マネーストック÷マネタリーベース
※補足3・・・
マネタリーベース=日銀が発行した日本円+政府発行の貨幣
現在の日本の貨幣乗数は2.47という異常値です。参考までに述べますと、高度成長期時代の我が国の貨幣乗数は10.0を超えていました。
要するに現在の日本は、金融機関はもっともっと貸出しを増やしたいのに借り手がいない状況なのです。
なぜ?
需要不足というデフレだからです。
EUやイギリス、あるいは株式市場がどうであろうと、デフレ脱却へむけた脱出速度を加速するため、なんとしても財政出動(需要創出)を断行してほしいと思います。