5月7日付けの日本経済新聞に以下の記事がありました。
『海外投資家が日本株離れ 米の上場投信、8400億円流出
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD02H5Q_X00C16A5MM0000/
米国で資金を長期運用する海外投資家の日本株離れが目立っている。米国で上場し、日本株に投資する主な上場投資信託(ETF)の資金流入から流出を差し引いた純流出入額は2015年12月以降約80億ドル(約8400億円)の流出超となった。3カ月連続で20億ドル規模の流出超となるのは安倍政権の経済政策アベノミクスが始まった12年末以降初めて。(後略)』
日本は内需主導で十分にやっていくことのできる国なので、海外投資家が日本株離れしようがしまいが個人的にはどうでもいい話なのですが、ただ困るのは株式による運用比率を高めている年金積立金の運用状況です。
海外投資家の保有率がおよそ3割を占めている現在の日本株市場では、どうしても海外投資家の動向によって株価が左右されます。そんな代物にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が手を染めるなど、極めてリスキーな行為だと思うのですが、マスコミを含め意外と国民世論が騒がないあたり、世間一般としては概ねそのことには肯定的な見解なのでしょうか。
国民の貴重な年金積立金をリスクマネーなんかに投じなければならないほど、我が国経済は脆弱ではありません。
どうも日本には戦後自虐史観という病のほかに、「日本は海外投資家や外需に依存しなければやっていけない」と妄信している「経済版自虐主義思想」という戦後病も蔓延しているようです。
彼ら自虐経済派にしてみると、よほどに日本経済は脆弱なのでしょう。
確かに現在はデフレで苦しんでいます。しかしそれは、十分に内需主導でやっていくことのできる国であるにもかかわらず、これまで適切なデフレ政策を打つことができなかった政治に問題があるだけです。
デフレとは潜在GDPに対して総需要が不足している状態のことですが、内閣府によると、そのデフレギャップは下のグラフのとおりです。
上のグラフはアベノミクス以降のデフレギャップ(GDPギャップ)の推移を示したものですが、内閣府は竹中平蔵財務大臣時代にギャップの試算基準を変更してしまったために、現在公表されているGDPギャップはだいぶ実際よりも小さめの数字で発表されています。
小さめの数字でも、昨年10月‐12月期だけで8.6兆円の需要不足となっています。
因みに、2014年の1月‐3月期だけ、インフレギャップになっていますが、これは皮肉にも消費税を8%に増税したときの駆け込み需要の結果です。それを除くと、ひたすらデフレギャップ状態です。
であるからこそ、速やかなる需要創出が求められます。
5月26日~27日に予定されている伊勢志摩サミットでは、世界的デフレを克服するための財政出動の必要性が最大のテーマになりそうです。
財政出動に後ろ向きなドイツをどのように説得するのでしょうか。
それにしても、あれほど頑なに「デフレは貨幣現象だから財政出動の必要なし」としてきた安倍総理が、一転して今度はG7で財政出動の必要性を説くのですからすごい変わり身ですね。決して嫌味でいっているのではありません。正しい方向に変わることはむしろ素晴らしいことだと思います。
そういえば過日、スティグリッツ教授やクルーグマン教授をわざわざ呼んで財政出動の必要性を提案させたのはこのためだったのかもしれません。
もし二人の米国人が来なければ財政出動に転じることができなかったとしたら、総理も相当の自虐主義者ですね。
そういえば・・・伊勢志摩サミットが行われる5月27日は、奇しくも日本海海戦記念日です。当然ですが、あのころの日本人には自虐史観も自虐経済思想もありませんでした。
いつになったら戦後が終わるのでしょう・・・