黒田日銀によるマイナス金利の導入が決定されたことにより、さっそく市場金利が更に低下しています。
10年物国債の金利は「0.05%」となり、8年物国債に至ってはマイナス金利になったとのことです。
おそらく、それでもインフレ率は上昇しないでしょう。インフレ率が上昇しない、ということはデフレを脱却できない、ということです。ただし、円安による輸入物価上昇に伴い物価が上昇することはありえます。ですが、実需による物価上昇は起こらないのではないでしょうか。
統計的にみても、低金利だから実需が増える、という理論は成立していません。
上のグラフのコアコアCPIとは、生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数のことです。ここでは対前年同月比でみています。
2014年4月から2015年3月までにかけて極端に上昇している部分があります。これは前年の消費増税で日本経済がリセッション(2期連続のマイナス成長)に入ったことによる物価下落の反動であり、実需による物価上昇ではありません。
このように貸出金利は低下し続けていますが、物価とは何ら相関していないのがわかります。(相関係数は「-0.36」)
要するに、金利水準がデフレの要因ではない、ということです。むしろ、デフレであるからこそ低金利なのです。
そのデフレによる悪影響は様々ですが、最も恐ろしいのは、既存の(あるいはそれまで蓄積されてきた)供給能力が歳月とともに毀損されていくことです。
下のグラフをみてもわかりますが、公共事業の大幅な削減により、建設業の就業者数は98年のデフレ突入を境にして大幅に削減されてきました。
この結果、現在の建設部門における人手不足が発生しています。
先日のブログでも申し上げましたとおり、設計労務単価を多少引き上げたところで、それでも折り合いがつかず入札不調に至るケースが増えています。
一度失ってしまった供給能力(人材、技術)を取り戻すことは誠に困難なことです。就業者数だけをみても、バブル前の1985年の水準を未だ取り戻せない状況です。
供給能力の低下は国力の低下です。であるからこそ、一刻も早いデフレからの脱却が求められています。