昨年の6月15日、内閣官房の有識者調査会が「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会第1次報告」をまとめました。
この報告によると、今後10年間で神奈川県の病床を9400床増やさなければならない計算になっています。
もちろんこれは高度急性期・急性期・回復期・慢性期と4つの病床数の合計でありますが、このような機能別病床数の過不足問題は、二次医療圏ごとに設置されている「地域医療構想調整会議」の場での話し合いで決めて行くことになっています。
しかし、ここで注意しなければならないのは、国の調査の在宅医療の数字には、自宅以外での在宅医療と介護施設などで行う医療も在宅医療としてカウント(計算)されている場合が多くあることです。
多くの人は「在宅医療・・・」というと漠然と自宅だけでの医療を想定しておられますが、実は自宅や介護施設での医療を併せて広い意味での在宅医療と呼ばれています。少なくとも厚生労働省はそうした解釈です。
さて、上のグラフのとおり、神奈川県では2025年には約9400床(川崎では約1500床)の主として療養病床などが不足するとのことですが、これは2025年には広い意味での在宅医療で約1万3千人(川崎では約2000人)を吸収できるとの前提で計算されています。もし今後10年間で1500床増やすことができなければ、これを在宅医療に移さなければならない、ということになります。
逆に、在宅医療で2000人吸収することができなければ、1500床の不足どころでは済まなくなるという計算になります。まこと、恐ろしい数字です。
現段階においては、これらの目標値達成は非現実的であり、あるいは介護・医療人材が不足していることから、過日「日本創成会議」からも高齢者の地方移住という提言がなされたわけです。
そうした中、いわゆる「在宅医療」に大きな期待を寄せておられる方々もいらっしゃいますが、実は24時間見守りが必要な独居老人の自宅での在宅医療は非常に難しいと考えている専門家が多くいます。
平成23年度の「医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査」によると、自宅での在宅医療を行うことができた理由として「家族などの介護者が確保できたため」との理由が上位に挙げられています。
つまり自宅での在宅医療には、ある一定程度の家族の介護力の存在が必要というものです。(下図参照)
因みに下のグラフは、国立社会保障・人口問題研究所が発表したデータですが、高齢者単独世帯、いわゆる独居高齢者数は、2010年は498万世帯だったのですが、2035年には全国平均53.1%増の762万2000世帯となる見込みとなっており、神奈川県では実に81.4%もの増加が想定されています。
とりわけ24時間の見守りが必要な独居老人の自宅での在宅医療は非常に難しく、入院、もしくは介護施設での医療提供を検討せざるを得ない場合も多いわけです。
また家族がいたとしても、例えば老老介護世帯や、働いている子供と二人だけの小家族等において、ほんとうに在宅医療が成立するのか甚だ疑問です。
私の知人の中にも、老老介護で24時間の見守りが必要な状態となったのですが、配偶者の介護力の限界に行き当たってしまい、入院を選択されたと言う方が何人かいらっしゃるのですが、この際の療養病院探しもまた極めて困難です。
地域包括ケアはとかく自宅での在宅医療・介護の話題が主体になりがちですが、もちろんそのような自宅での在宅医療の更なる充実は絶対に欠かせないことは当然ではありますが、このような24時間の見守りが必要な独居老人が今後急増することを考慮したうえで、現実的に療養病床整備がこれ以上不可能な場合には、質の高い医療提供が可能な高齢者施設への入所も併せた地域包括ケアの柔軟な制度設計も必要になるのではと思われます。
こうした質の高い医療の提供が可能な特別養護老人ホームなどの高齢者介護入所施設における医療機能の強化が大変に重要であると考えます。
具体的には、・・・明日につづく・・・