『時代は再び第一次世界大戦前~日本よ、備えはあるか』
第23回
先日、北朝鮮が4度目となる核実験を実施しました。北朝鮮当局は、初めての水爆実験が成功裏に実施された、と表明しているようですが、本当に水爆であったのかどうか事の真意は定かではありません。
『「水爆実験成功の勢いで総進軍を」街頭にスローガン、鼓舞され続ける平壌市民
http://www.sankei.com/world/news/160109/wor1601090026-n1.html
核実験実施から3日が過ぎた北朝鮮の首都・平壌では9日、街頭に「水爆実験に成功した勢いで今年の総進軍を力強く推し進めよう」などと、核実験を機に生産現場などでの成果向上を呼び掛けるスローガンが出始めた。(後略)』
日本にとって北朝鮮は、現実に存在する明らかな軍事的脅威です。
北朝鮮の国家総体としての軍事力をみると、確かに脆弱ではあります。とはいえ、この国は世界秩序を脅かす「大量破壊兵器の拡散」と「非対称驚異の攪乱」という二つの要素をもちあわせています。前者は即ち核保有であり、後者はテロ・ゲリラのことです。
性能は別として日本にはない核ミサイルを保有し、100万にもおよぶ陸軍兵力をもち、12~15万人の特殊部隊を有しています。その一部(北朝鮮工作員)は、既に相当数が日本に潜伏しているといわれています。
例えば朝鮮有事が発生した場合、この潜伏している北朝鮮工作員たちは、日本国内でテロ・ゲリラ部隊となって活動します。自衛隊や米軍の基地はもちろん、上下水道や送電網などの各種インフラを破壊して日本国民を恐怖と混乱に陥れます。それが彼らの任務です。
そのうえ北朝鮮は、権力者の都合により政治外交の方向性がころころ変わり、追い詰められると何をしでかすか予測もつかない、という点において実に厄介な隣国です。
専門家によると、北朝鮮の核ミサイルの驚異にはアメリカの核抑止は必ずしも効果はないようです。
平成25(2013)年6月に、自民党は『新防衛大綱』に対する提言の中で「敵ミサイル基地攻撃能力の保有」という検討項目を掲げました。北朝鮮による核の脅威に敵地攻撃能力をもって対抗しようということなのでしょう。備えある日本をつくるためには素晴らしいことであると思います。
ところがその後、同年7月の「防衛省在り方検討中間報告」では、「弾道ミサイルへの総合的な対応能力充実」という表現に留められてしまい、その後トーンダウンしてしまいました。
なぜでしょう・・・
あまりにも課題が多すぎるからでしょう、きっと。
例えば、敵地攻撃を可能にするためには、目標情報を正確につかむことのできる情報収集能力が必要です。24時間の監視体制を築くには数基の偵察衛星が必要ですし、また人口衛星などの機械的情報収集にも限界がありますので、人的な情報収集能力の強化が求められます。つまりスパイを送り込むことも念頭におかなければなりません。そして当然のことながら、攻撃兵器として、トマホーク等の巡航ミサイルや戦略爆撃機も装備しなければなりません。
これら諸々の予算を確保する覚悟が果たしてあるのか、という問題もあります。
それに加え、敵地攻撃が自衛権行使にあたるのか、あるいは、我が国が戦後一貫して誇ってきた「専守防衛」の姿勢に反することになるのではないか、という政治問題を解決しなければなりません。
結局のところ、こうした議論をするのは面倒だからやめておこう、ということではないでしょうか。
これが敗戦国の姿です。