遡れば…バブル崩壊とその後の橋本内閣による緊縮財政によって、日本はデフレ経済へと突入しました。
以来、この約20年間、デフレにより税収が不足し、それを赤字国債で賄い、政府負債残高の抑制を理由にさらなる緊縮財政を行って益々デフレ化する、という悪循環に陥ってきました。ただし、ここでいう政府負債残高は、いわゆる「国の借金」ではありませんのでご注意を。
因みに、公共事業のやり過ぎが日本の政府負債残高の対GDP比率を増大させた、というのも嘘。政府負債残高を増大させた真の原因はデフレです。
本気で負債残高を減らしたいのなら、デフレを克服してGDPを増やすしかないのに、政府や自治体が率先して緊縮財政を断行しています。
過日、私は川崎市議会において、財政当局に「財政の健全化」の定義について質問しました。答弁は次のとおり・・・
「財政健全化の定義はできないが、政府が『骨太の方針』で示している国・地方を通じたプライマリーバランスの黒字化のことと理解している・・・だから本市もプライマリーバランスの黒字化を目指す・・・」(大村財政局長)
平素は地方分権を叫びながら、答えに窮すると政府見解を踏襲するのが昨今の地方行政の特徴ですが、要するにプライマリーバランスの黒字化とは財政均衡主義のことで、つまりは緊縮財政を行っていく、とのことです。
そこで私は、デフレ期に緊縮財政を行うと、かえって需要(市内総生産)を縮小させて税収が減ってしまうことを指摘させて頂きました。なぜなら、税収は市内総生産(市内GDP)に相関するからです。
下の図は、市税収入と市内総生産の推移です。これをみると市税収入と市内総生産の相関係数は「0.72」で、非常に高い相関性を示しています。(図をクリックすると拡大されます)
また、川崎市の場合、市内総生産は日本の輸出額に相関する、ということも議会で指摘させて頂きました。
さらに下の図をみて頂くと、輸出額の推移と市内総生産の推移は、なんと相関係数「0.91」という極めて高い相関性を示しています。
これは川崎には輸出競争力のある企業が集積していることを裏付けているのですが、世界的デフレのなかで輸出が落ち込むようなことになると、本市の税収に大きな打撃を与えます。そのなかで本市がさらに緊縮財政を進めれば、益々もって税収が不足することになります。
まずは、デフレ期の緊縮財政はかえって市民を貧しくしてしまう、という基本認識が必要です。
そのうえで、市内総生産を拡大するための政策(需要創造)をうっていくことが求められています。例えば、医療や介護など、既にインフレギャップとなっている分野への投資や消費が必要ですし、未来の所得となる技術開発投資、あるいは防災力を高めるためのメンテナンスを含めたインフラ投資も必要です。
国はもちろん、それぞれの地方自治体においても、デフレ克服と国民の安全を守るために為すべき支出は山ほどあります。
それでも負債残高の増大が心配な方へもう一度言います。デフレを克服しなければ税収は増えず、税収が増えなければ負債残高を減らすことはできないのです。それを市内総生産の拡大によって実現することにより、市民、国民の所得を増やし、安全なまちをつくることができるのです。