現在、川崎市の消防航空隊は2機のヘリコプターを保有および運用している。
意外と知られていないが、消防航空隊は人命救助活動はもちろん、空中消防活動や災害現場からの情報収集活動などなど、数多くの災害にも出動し、空から市民の安全を守っている。
これまで、「そよかぜ1号」と「そよかぜ2号」のヘリコプター2機体制でその任務遂行にあたってきたが、そのうちの1機「そよかぜ2号」が平成6年の運航開始以来、運航期間20年を経て、機体の老朽化に伴う不具合箇所が増加したことなどから更新の検討がなされてきた。
検討の結果、岐阜県や埼玉県の防災ヘリコプターの墜落事故を受けて、総務省消防庁から消防組織法に基づく助言によって、運航重量に余裕をもち、安全な活動を行うことが求められていること等を踏まえ、運航能力を重視したより安全性の高い機体に更新することが決定された。
それはそれでいい。任務遂行の目的を着実に達成するため、必要な機体能力を十分に有した機種を選定することは当然のことである。なかには金額の多寡を問題視する議員もいるが、川崎市民(国民)の安全保障にかかわることなのだから、コストを理由に機種の能力を下げることはありえない。
ただ、選定された機種がエアバス社製であることには驚かされた。
「そよかぜ1号」は川崎重工業製のBK117C-2型で、今回退役する「そよかぜ2号」も川崎重工業製のBK117B-2型であった。当然のことながら、更新される新機種も川崎重工業製もしくは国産機であるべきだと思っていたのだが、総務省の強い助言(指導!?)によりエアバス社製のAS365N3+型(約17億円)に機種変更されることになったという。
なぜなのか…
今回導入されたエアバス(AS365N3+型)機に匹敵する機種が川崎重工業にないわけではない。川崎重工業には、BK117D-2型という立派な新機種がある。確かに、エアバス社製に比べ、航続距離や航続時間など、機体性能はやや劣っているのは事実だが、中長期の未来を見据え、我が国の防衛産業育成の観点からも、ぜひ国産機を導入してほしかった。エアバスに劣らないものを国内生産できるようにする努力を、行政と国内企業が一丸となって進めていくべきである。そのことが日本国民および川崎市民の安全保障につながるのだから。
だが、川崎市消防局によれば、川崎重工業製のBK117D-2型の国土交通省航空局による形式証明作業に時間がかかっており、仮に川崎市がこの機種を購入しようとしても承認がおりないのだという。
なぜ形式証明作業に時間を要しているのかはわからない。
ひょっとすると職員不足による弊害かもしれない。日本の公務員は多すぎる…という風潮が蔓延して久しいが、事実は違う。
グラフのとおり(クリックすると拡大されます)、地方公務員や天下りを含めても、日本の労働人口に占める公務員数はOECD平均値を大きく下回っている。ちなみに、いま話題のギリシャにしても、マスコミが騒ぐほどに多くはなく、公務員数はだいぶ減っている。
今の日本は公務員の削減による削減によって、その弊害のほうが著しくなりつつある。地方自治体もしかりである(むろん例外の自治体もある)。たとえば、過日に川崎市で発生した簡易宿泊施設の火災事件の一件においても部局間での連携連絡の不備が明らかになったが、現場では個々に与えられた職務に専念することに精一杯で他局への連絡は後回しになってしまうケースも多いようだ。
また、昨年8月に発生した広島市の土砂災害では多数の被災者と死者がでたが、その被害地域の多くは「警戒区域」に指定されていなかった。理由として、行政の人員不足により「警戒区域」、「特別警戒区域」の指定作業が遅れてしまった面もあるという(一部証言)。経済評論家の三橋貴明氏は、「公務員の削減」が広島市民の安全保障を弱体化させていた可能性がある、と指摘している。
今、地方行政を含め、日本に求められているのは公務員の効率的な配置であって、けっして「削減」ではない。つまり「和」をつくることである。ここでいう「和」とは、みんなで仲良く協調し合って…という意味ではない。「以和為貴」の真の意味を理解している人は意外と少ない。
「和の定義」「和の目的」「和の作り方」…これを明確に理解し、着実に断行できるリーダーがほしい。日本にも川崎にも…
とにもかくにも、次なる消防ヘリの更新は10年後である。「そよかぜ1号」の更新機は必ず国産機にできるようにしなければならない。