政府は去る1月25日、年内にも新たな防衛大綱を策定することを決定した。
防衛大綱とは10年程度先を見据えた日本の防衛力の整備、維持、運用に関する基本的な指針である。前回の2010年大綱では、「基盤的防衛力構想」から「動的防衛力構想」への転換が謳われた。私は、新たな大綱において、この「動的防衛力構想」の取り扱いがどうなるのかに注目している。
この動的防衛力については、その定義が明確化されていない。
もし動的防衛力という言葉を使うのであれば、その言葉の定義をもっと明確にしてほしい。これまでの経過をふまえれば、ともかく「動的防衛力構想」は「基盤的防衛力構想」のアンチテーゼらしい。読売新聞はこの「動的防衛力構想」を社是にしているようであるが、読売新聞によるその定義も意味不明だ。
ただでさえ、自衛隊の装備は偏重している。例えば世界の海軍でP3Cを一番保有しているのは日本の海上自衛隊であるという。つまり自衛隊は、偵察機や輸送機ばかりを保有し、作戦行動を独自で完結するに足る装備のない軍隊となっている。言い換えれば、海上自衛隊は米国第7艦隊の下請け。航空自衛隊は米国第5空軍の下請け。陸上自衛隊は米国第1軍団の下請けになりさがっているのではないか。
防衛費がGDP比1%以下のまま「基盤的防衛力構想」を捨て「動的防衛力構想」の概念を推し進めていくと、さらに自衛隊の装備は偏重し、独自の外交交渉力を備えるに足る軍事力を有することができなくなる。また、GDP比1%以下のままで「基盤的防衛力構想」を捨てるということは、国の主権を放棄するに等しいとさえ私は思っている。
よって、「動的防衛力構想」には反対だ。